賀茂社関係文書翻刻プロジェクト

コレクション: 賀茂社記録

賀茂社記録. 第1冊 - 翻刻

賀茂社記録. 第1冊 - ページ 98

ページ: 98

翻刻

中宮は后町よりいまたわたらせおはしまさねは中 御門殿へやりよせて宮の女房一車やりつゝけて 大内右近馬場賀茂のかたさまへあくかれゆかれけり 大納言直衣にて騎馬せられたりけりさらぬ人々も 或は直衣或は束帯にて六位まてともなひたりけり 賀茂神主幸平狩装束して車のともにまいれり むかしはかゝる雪には馬に鞍置まうけてこそ侍 しに今はかやうの事たえて侍つるにめつらしく やさしく候ものかなとてわかき氏人ともおなしく 狩装束してをの〳〵鷹手にすへてかんたちの かたへ御ともつかうまつりて雪の中の鷹狩して 御覧せさす道すからいと興(キウ)ある事ともありけり 宮の女房内 ̄ノ女房いひかはしつゝやさしき事とも おほく侍りけり後朝に大納言宮の御方の按察(アゼチ) 殿のもとへ  此春はけにふることそ思ひ出るかはらぬ宿の雪を詠て  昔見し庭の雪とは思はねと誰ためならぬ宿そ恋しき  しら雪のふれはかひある世なれとも昔よいかに忘れわひぬる 堀川殿いそのかみふりにし事を返事に  万代も雪つもるへき雲の上にたゝ思やれ秋の宮人                     《割書:中宮を秋宮と云也|》