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中宮は后町よりいまたわたらせおはしまさねは中
御門殿へやりよせて宮の女房一車やりつゝけて
大内右近馬場賀茂のかたさまへあくかれゆかれけり
大納言直衣にて騎馬せられたりけりさらぬ人々も
或は直衣或は束帯にて六位まてともなひたりけり
賀茂神主幸平狩装束して車のともにまいれり
むかしはかゝる雪には馬に鞍置まうけてこそ侍
しに今はかやうの事たえて侍つるにめつらしく
やさしく候ものかなとてわかき氏人ともおなしく
狩装束してをの〳〵鷹手にすへてかんたちの
かたへ御ともつかうまつりて雪の中の鷹狩して
御覧せさす道すからいと興(キウ)ある事ともありけり
宮の女房内 ̄ノ女房いひかはしつゝやさしき事とも
おほく侍りけり後朝に大納言宮の御方の按察(アゼチ)
殿のもとへ
此春はけにふることそ思ひ出るかはらぬ宿の雪を詠て
昔見し庭の雪とは思はねと誰ためならぬ宿そ恋しき
しら雪のふれはかひある世なれとも昔よいかに忘れわひぬる
堀川殿いそのかみふりにし事を返事に
万代も雪つもるへき雲の上にたゝ思やれ秋の宮人
《割書:中宮を秋宮と云也|》