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翻刻
【扇に書かれた文字】
養
蚕
秘
抑蚕の由来を尋るに頃は人王二十二代癸卯ノ七年箱当
もろこしより常陸の国豊浦のみなとに着舟あり
其時雄略天王の御后みづから養蚕したまふ也
それよりこと〳〵くふえん事うしほのみつるにひとし
しかりといえともその手たて疎にしていかでか勝利を
現代語訳
【扇に書かれた文字】
養蚕秘伝
そもそも蚕の由来を尋ねると、人皇二十二代雄略天皇の癸卯の七年に、箱が唐土(中国)より常陸国豊浦の港に着いた船があった。その時、雄略天皇の皇后がみずから養蚕をなされたのである。それ以来、次第に広がることは潮が満ちるのと同じようであった。しかしながら、その手法が粗雑であったため、どうして利益を得ることができようか。
英語訳
【Text written on a fan】
Secrets of Sericulture
When we trace the origins of silkworms, in the seventh year of Kinoto-u during the reign of the 22nd Emperor Yūryaku, a box arrived by ship from China (Morokoshi) at the port of Toyoura in Hitachi Province. At that time, Empress Yūryaku herself engaged in sericulture. From then on, it gradually spread like the rising tide. However, since the techniques were crude, how could one achieve profit?