疫病関連資料を翻刻!

コレクション: コレクション2

国字痘疹戒草 3巻 - 翻刻

国字痘疹戒草 3巻 - ページ 41

ページ: 41

翻刻

【右丁】 らまし吉凶(よしあし)をわきまへされはゆき届(とゝ)かぬ事あるへきか為(ため)に痘中あ らましの症候(よふたひ)を附(そへ)録(しる)すこと左の如(こと)し 一/丹渓(たんけい)曰(いわく)凡(およそ)痘/発出(はつす)るの前/先(まつ)熱(ねつ)して諸(もろ〳〵)の症をなす熱/軽(かろ)きものあり 重(おも)きものあり嘔吐(えすきはく)もあり泄瀉(はらくたる)もあり搐搦(ひきつけ)するもあり目(め)を張(は)りて 反張(そりかへる)もあり又/悠(うつ)々として睡(ねふ)るもあり啼(なき)号(さけ)ひて止(やま)ざるもあり大熱さ めて又/発(はつ)するもあり譫語(うわこと)いふて躁(さわく)もあり或は腹(はら)腰(こし)いたむもあり 大便/通(つふ)せず小便しぶり或は膏(あふら)の如く血(ち)の如きを通つるあり千変(せんべん) の症をなすゆゑ老医(こふしやいしや)も痘といふ事を決(けつ)しかたく食傷(しよくしやう)風邪(ふうじや)驚(きよう) 風に似(に)て又痘症にうたかはしき故(ゆゑ)古人(むかしのひと)これを疑似(きじ)の症(しよう)といふとな り 【左丁】 一/始(はし)めより痘熱(ほうさうのねつ)を発(はつ)するものあり又(また)他(ほか)の病(やまひ)にて熱(ねつ)を発(はつ)し痘を発 するものあり又一日/熱(ねつ)して痘を発すもあり三日/程(ほと)にて見点(けんてん)するを よしとす又(また)数日(すじつ)にして痘を発するもあり何(いつ)れ痘疫(ほうさう)流行(はや)る時(とき)なら は早(はや)く医師(いしや)に請(こ)ひて薬(くす)りを求(もと)むへし医師(いしや)もよろしく其(その)症(やまひ)を詳(つまひ) らかにして薬(くす)りを用(もち)ゆへし熱してより二日にもならは紅紙燭(へにしそく)もて 頭面(かほ)を照(てら)し診(うかゝ)ひ皮(かは)と肉(にく)との間(あひた)に赤(あか)き点(てん)ありて蚊(か)の嘴(くひ)し跡(あと)の如(こと) きもの何処(とこ)〳〵に幾点(いくつ)あるといふ事/見覚(みおほ)へおきてまた次(つき)の日(ひ)灯(ともしひ)を てらし診(うかゝ)ふて昨日(きのふ)見置し点(てん)窠粒(つふたち)たるよふにみえ別(へつ)に又(また)昨日(きのふ)見し 如(こと)きもの出(いて)あれは大体(たいてい)痘としるへし勿論(もちろん)其(その)症候(よふたひ)等(なと)引合(ひきあは)せ攷(かんか)ふ べきなり

現代語訳

【右丁】 大まかな良し悪しを理解していなければ、行き届かないことがあるだろう。そのために痘瘡中の大まかな症候を付録として記録することは次の通りである。 一、丹渓が言うには、およそ痘瘡が発出する前に、まず熱して諸々の症状を現す。熱の軽いものもあり、重いものもある。嘔吐もあり下痢もあり、痙攣するものもある。目を見開いて反り返るものもあり、また ぼんやりとして眠るものもある。泣き叫んで止まないものもある。大熱が冷めてまた発するものもある。うわ言を言って騒ぐものもある。あるいは腹や腰が痛むものもある。大便が通じず小便が渋り、あるいは膏のような血のようなものを出すことがある。千変万化の症状を現すので、老練な医師も痘瘡であると断定するのは難しく、食傷・風邪・驚風に似ていて、また痘症と紛らわしいゆえに、古人はこれを疑似の症と言うのである。 【左丁】 一、初めから痘瘡の熱を発するものもあり、また他の病気で熱を発してから痘瘡を発するものもある。また一日熱してから痘瘡を発するものもあり、三日程で発疹が見えるのを良しとする。また数日してから痘瘡を発するものもある。いずれにせよ痘疫が流行する時なら、早く医師に依頼して薬を求めるべきである。医師もよく その症状を詳しく調べて薬を用いるべきである。熱してから二日にもなれば、赤い紙燭で頭面を照らして診察し、皮と肉との間に赤い点があって蚊に刺された跡のようなものが何箇所かに幾つかあるということを見覚えておいて、また次の日に灯火を照らして診察して、昨日見ておいた点が粒立ったように見え、別にまた昨日見たようなものが出ていれば、大体痘瘡と知るべきである。もちろんその症候等を照合して考察すべきである。

英語訳

【Right Page】 If one does not understand the general good and bad signs, there will be things that are overlooked. Therefore, recording the general symptoms during smallpox as an appendix is as follows: 1. Danxi says: Generally, before smallpox breaks out, first there is fever with various symptoms. Some have mild fever, others severe. There may be vomiting, there may be diarrhea, some have convulsions. Some open their eyes wide and arch backward, others are drowsy and sleep. Some cry and wail without stopping. Some have great fever that subsides and then returns. Some speak deliriously and become agitated. Some have abdominal and lower back pain. Some cannot pass stool, have difficulty urinating, or pass something like oil or blood. Because there are countless variations of symptoms, even experienced physicians find it difficult to definitively diagnose smallpox, as it resembles food poisoning, cold, or convulsive disorders, and is easily confused with smallpox symptoms. This is why the ancients called these "doubtful symptoms." 【Left Page】 1. Some develop smallpox fever from the beginning, others first develop fever from other illnesses and then develop smallpox. Some have fever for one day then develop smallpox, and it is considered good when spots appear in about three days. Others develop smallpox after several days. In any case, when smallpox epidemic is spreading, one should quickly request a physician and seek medicine. The physician should also carefully examine the symptoms in detail before using medicine. When it has been two days since the fever began, illuminate the head and face with a red paper candle for examination. If there are red spots between the skin and flesh that look like mosquito bite marks in several places, remember this observation. Then the next day, illuminate with a lamp for examination again. If the spots seen yesterday appear to have become raised, and separately there are new spots like those seen yesterday, one should generally recognize this as smallpox. Of course, one should compare and consider these symptoms together.