翻刻
【右丁】
も軽(かろ)く瘡(でもの)も稀(すくな)ふして頭面(かほ)に二ツ三ツ手足(てあし)に四ツ五ツを発(はつ)し或(あるひ)
は産瘡(うぶせ)とて産屋(さんや)の内(うち)に於(おひ)て惣身(からだ)に赤(あか)き細(ちいさ)なる瘡(てもの)を発(はつ)す是(これ)
を爛衣瘡(らんいさう)といふ《割書:俗(そく)に胎毒(たいどく)|ともいふ》其(その)内(うち)に痘(ほうさう)を六ツ七ツ雑(まじ)へ出(いだ)すもあり父(おや)
母(おや)もその痘といふ事をしらで遂(つひ)に七八十/歳(さひ)に至(いた)り此(この)阨(やく)を免(のかれ)
たりと思(おも)ふもありこれを其(その)幼稚(えうち)の時(とき)を知(し)らずといふ必(かならず)しも有(ある)
無(なき)の説(せつ)に抱(かゝは)り泥(なづ)むべからず且夫(そのうへ)大人(おとな)の痘(とう)は小児(こども)より重(おも)しと
す往々(たび〳〵)四五十の人/痘(はうさう)患(わづら)ふをみるに稀密(おほきすくなき)の差別(しやべつ)ありといへども
何(いづ)れも皆(みな)皮膚(みのかは)厚(あつ)く気(き)も血(ち)も不足(たらず)して凶逆(わるきやまひ)をなす者(もの)多(おほ)し
夫(それ)故(ゆゑ)痘は四五歳より十二三歳のあひたを吉(よし)とす凡(およそに)痘の稀(すくなき)
【左丁】
は気血(きけつ)壮実(つよく)して瘟疫(うんえき)に感(かん)する事/浅(あさ)きゆゑなり密(に?のおほき)は気血
衰虚(よはく)して疫癘(えきれい)の気を受(うけ)る事/深(ふか)き故(ゆゑ)なり痘は稀密(きみつ)にかゝ
はらず順逆(じゆんぎやく)を要(えう)とすとて瘡(でもの)の多(おほき)少(すくなき)にはよらず症(やまひ)の善悪(よしあし)を第(だい)
一(いち)とする事なり古人(むかしびと)も稠密(ちうみつ)を恐(おそ)れす一点(いつてん)を嫌(きら)ふとて一点(ひとつ)にて
も悪(あし)き痘あるときは害(わざはひ)をなすものにて稀疎(てものすくなき)なれはとて忽(おろか)せ
にすべからず又(また)凶逆(きようぎやく)を恐(おそ)れず食(しよく)を要(えう)すとてたとひ《振り仮名:六ヶ敷|むつ しき》
症(やまひ)なりとも飲食(のみくひ)をよくする者(もの)は幸(さいはひ)に愈(なを)るもありされど又(また)
食(しよく)を二にして膿(うみ)を一とすとて痘(ほうさう)灌膿(うみもた)ざれは食(しよく)をよくするとて
よろこぶことなかれ且(かつ)痘は諸病(もろ〳〵のやまひ)とちがひわづか十二日を定期(かぎり)