翻刻
【見開き二頁を八コマの図と説明文により女中一生記とする】
【右頁欄外余白に題の一部】
女(じよ)中(ちう)
【右頁上段 題 右から読む】
聟(むこ)入(いり)
【むこ入儀式の図】
むこ入は。祝言よりさきに
日がらを定めまいるなり
むこ《割書:并》むこのおや仲人(なかふと)
つれ立行むこの親なき
は親ぶんの人同道して
行也。さかづき座つき《割書:二》出
むすめの親よりはじめ
聟(むこ)にさしむこより
一門中不残さかづきす
るさかづきしうと《割書:二》納り
ざうに出るすいものいで
其後ぬりさかづきにて
三こんまはりをさまる
【右頁下段 題 右から読む】
嫁(よめ)入(いり)
よめいりして親の家出
跡(あと)にて門火を焚き死(し)人の
やうに二たびかへらぬをしう
義とするまことにむすめ
人と成おやの手をはなれ
行よりしては我父母事
を思ひかへむこのおやたちへ
よくつかへ今迄の我おや
のごとくしんじつに孝(かう)を
つくしよくつかへへし。則
我おやへつかへるにをなし
よめいりの夜行時二たび
此 家(いへ)へかへらぬと思ひ【日】定行べし
【右頁上段 題 右から読む】
祝(しう)言(げん)之(の)盃(さかづき)
むこの家へ行と待上郎
手引して座えつき。さん
ぼう出しうとしうとめ
むこむかふ座にならびゐて
よめよりさかづきはじめ。むこ
にさすいつにても三こんづゝ
うけてのむなり。一 門(もん)ぢう
みな〳〵さかづきする
むこはさかづきすむと立
べし。よめは物かずいはぬ
がよしさかづきすみ色(いろ)
なをし有。りやうりも成
程(ほど)しづかにくふべし
【右頁下段 題 右から読む】
新(にゐ)枕(まくら)
しう義 食(くい)事万しまひ
ねやに入《割書:ル》時は仲人むこ
よめばかりにて。しうと
より持せ行【持たせ行く】。さげ重(じう)ひら
き仲人あいさつにてむこへ
さけをすゝむる。此時はむこより
のみよめへさす。むこもうち
くつろぎ盃(さかづき)して。仲人よき
程にあいさつして次(つぎ)へたつ。
よめあいさつ。何か物かず
多(おゝ)くいふ事あしく。とかく
心はおちつきゐて成程うい
〳〵しきていこそよけれ
【左頁欄外に全体の題「右頁からの続き」右から読む】
一生(しやう)記(き)
【左頁上段 題 右から読む】
平(へい)産(さん)之(の)躰(てい)
くはいにんに定りし時身持
大事也 目(め)にあしき事を見ず
みゝにあしき事をきかず
あしきあぢはひの物 食(しよく)せず
物ことはらたてず。しづかに
くらすべし。心よき事にうつし
よくつゝしむ時は。生(むま)るゝ子
おとなしく一 生(しやう)のとくなり
又髙き所の物 手(て)をのばし
取べからず。をもきものもつべ
からずあたり月に灸すべ
からず立(たち)ゐしげきはあしし
臥(ふす)ときは足(あし)をかゝめて臥べし
【左頁下段 題 右から読む】
産(さん)後(ご)養(やう)性(しやう)
さんごには風にあたらぬやう
すべし。又あせかく事もあしし。は
やく男にちかづくべからず。七 夜(や)の
内 生肴(なまざかな)くふべからず。或ははやく
髪(かみ)あらひ行水(ぎやうずい)など早(はや)くする
はあしゝ。惣(さう)じてさんごにも物
しづかに養性(やうじやう)すべし。いかり
かなしむ事いむべし。口(こう)ちうの
そうぢは/爪(つめ)を取などおそくす
べし。又生れ子物こゑあげぬ先(さき)
にわたにて指をつゝみ。口の内の
古血(ふるち)を取べしのみこめば
ほうそうおもき物としるべし
【左頁上段 題 右から読む】
子(こ)之(の)育(そだて)様(やう)
子をそだつる事母をやつね〴〵
心得有べし。たとへのごとく
氏(うぢ)よりそだちとてくいもの
万事(ばんじ)いやしからぬやうにすべし
又 食事(しよくじ)は多(おゝ)きより少(すく)なき
事よしいふくも子供の時より
おほくきすれば年たけて
其くせうせず。少うすくきす
べし。つよく泣(なか)する事どく
なり。又ちいさきときに。人
だち多(をゝ)き所へつれ行こと
なかれ気をのぼし。どくなり
我まゝになきやう《割書:二》そだてへし
【左頁下段 題 右から読む】
客(きやく)噯(あしらひ)之(の)所(ところ)
夫(をつと)の家(いへ)に客(きやく)来(きた)る時さつそく
言葉(ことば)をかけてよく〳〵念比(ねごろ)に
誰(たれ)人さまもあしらひ□□□□□□
惣して上下(かみしも)の人あれ□□も
あいさつつど〳〵に心がけべし
去(さり)ながら男のあいさつある内
さし出物いふにはたゝなかれ
よき程に心得るべし物いひすぐ
るは見ぐるし。或は客 食事(しよくじ)の時
中ば過にして。其客■■に
あいさつすべし。又ちかづきにて
なき客には夫(をつと)の引合(ひきあはせ)を待(まち)ゐ
てあいさつをすべし