東京学芸大学「学びと遊びの歴史」を翻刻!

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女源氏教訓鑑 - 翻刻

女源氏教訓鑑 - ページ 13

ページ: 13

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ゝ【右頁上段】 忠(ちう)孝(かう)五(ご)欲(よく)之(の)圖(づ) 【右頁中段】 女 教(けう)訓(くん)寳(たから)草(くさ)《割書:女一代の身をおさめ家をとゝのへ不断の|心もち古人のおしへを書あつめる物ならし》 ▲黒(すみ)にちかづく者(もの)は黒(くろ)くなり。賢(けん)に近(ちか)づく者は明(あき)らか也。才ある者に近つけば ちゑをまし。かたくるしきに近付(つけ)ば愚人(ぐにん)となり。智者(ちしや)にちかつけば賢(けん)に 成《割書:ル》善人(ぜんにん)に近付ば功德(こうとく)を得。愚(ぐ)に近付ばくらく成。侫(ねい)人に近付ばへつらふ 心をこる也。教(をしへ)ずして人のあやまちをいかりにくむは大き成 無理(むり)なり。人を つかふによき事をばほめてあしきことをばゆるくすべし。あしき事おのつから直(なを)る 物なり。よき事したるをばもてなさずしてあしき事したるをゆるさざる時は 心よりしたがはざる故(ゆへ)。なをりがたくして。必(かならす) そむきはしるものなり ▲親(をや)にはよく孝行(かう〳〵)をつくすべし。孝は百行の宗(そう)なり。今の世の人は。ぐち なる親はむり多(をゝ)き故。孝行成りがたしと思へり。然れども是は道理(だうり)にあたら す。親より受(うけ)たる身(み)をそこなひやぶり。又は悪事(あくじ)にて命を捨(すつ)る類(たぐい)を 大 不幸(ふかう)といふ也。身を立(たて)仁道(じんたう)につとめ家名をあげて親の名を顕(あらは)すを 第一の孝行也とす。我親をはうやまはすして他人ばかり敬(うやま)ふは悖礼(ぶれい)【注】といふなり 子をあいするこゝろをもちておやにつかへば其身孝行の名をとるべし 親より金銀 家督(かとく)をゆつられたる者は。大方(たいはう)の人。親の恩(をん)はなしと思へり。または幼(よう) 少より奉公して親どもやしなひし故。かへつて親へ恩ありといふやから。世(よ)に多 し是は放逸(はういつ)なる云分(いゝぶん)也。 父母(ふし)の恩(をん)は大海よりもふかく須弥山(しゆみせん)より もたかしとなり一夜(や)の育(はくゝみ)一日のなさけ其 志(こゝろざし)のあつき事一 生(しやう)の内にも 謝(しや)しつくすへきや佛は父母の恩(をん)の深き事 無量(むりやう)の経巻(きやうぐわん)に盡しがたしとのへ給ふ 【注 「悖礼(はいれい)」。 孝経に、「不_レ敬_二其親_一。而敬_二他人_一者、謂_二之悖礼_一。とあるを引いている。】 【左頁中段】 ▲妻女(さいじよ)のみち正(たゝ)しからされば國(くに)ほろび家(いへ)ほろぶる事 昔(むかし)より其 数(かず) 多(おゝ)し妻(つま)才智(さいち)なれば夫(をつと)のわざはひすくなき物也。夫のあしき事をば かくし。よきをば顕(あら)はし。六 親(しん)をよく和合(わがう)せしめ賤(いや)しき夫(をつと)にてもよく 侑(した)ひ。おそれて貴(たつと)く見する也。家のさかへおとろへは妻(つま)の善悪(ぜんあく)による もの也。有 書(しよ)にいはく。己(をのれ)より富(とめ)る人の娘(むすめ)を妻とすべからず。かれ其(その) 富貴(ふつき)を心にさしはさんで。夫(をつと)をかろしめ。舅(しうと)姑(しうとめ)の気(き)にもいらず。我 心に奢(おごり)有ゆへ萬つ家のやぶれと成事ありて必(かなら)すほろぶるもの也 ▲悪敷妻(あしきつま)なれば夫もわざはひに逢(あふ)事 多(おゝ)し。つねに夫の悪事(あくじ)を語(かたり) 人にもかろく思はせ。我はいやしみ少しも恐(をそ)るゝ体(てい)なく。家内(かない)をみだすもの なり。貧(まづ)しく成ては夫婦(ふうふ)の口論(こうろん)たへぬ故。親もうれひおほし。夫婦は 一 同(とう)に孝行(かう〳〵)なればをやの心もたのしき也。女の心にたしなみ有べし ▲女の性(しやう)はみなひがみたるもの也。人我(にんが)の相(さう)有てわづかの事にもいかりて かほ赤(あか)くなり。貪欲(とんよく)はなはだしく恥(はぢ)をも忘(わす)れ。我身を愛(あい)して人へは 邪見(じやけん)なり。偽(いつは)り多(をゝ)くして詞(ことば)をたくみにし。さてくるしからぬ事をも とへばいはず。扨は思慮(しりよ)ふかきかと思へば浅(あさ)ましき事をもとはず語りに いひ出し。たばかりかざる事は男の智恵(ちえ)にもまさるやうにて。しかも人に 見すかさるゝ事 多(をゝ)し。物の哀(あはれ)をしらず。又少の事にも人を恨み人のうはさ をいひて常(つね)の慰(なぐさ)みとし。へつらひかざる故 損(そん)多(をゝ)く。絶(たつ)【字面は「湛」に見えるが文意からは「堪」ヵ】べき事にはよはくし て。よはかるべき事には我慢(かまん)をおこし。短慮(たんりよ)未練(みれん)にして行末(ゆくすへ)のかんかへなき 物なり。女の性はかく拙(つた)なきものなれども夫のかしこきは女もかしこく見ゆる也