東京学芸大学「学びと遊びの歴史」を翻刻!

コレクション: コレクション 1

女源氏教訓鑑 - 翻刻

女源氏教訓鑑 - ページ 14

ページ: 14

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【右頁上段 図 囲みの題】 名(みやう)よく 【右頁本文】 ▲女は明(あき)らか成 鏡(かゞみ)にて顔(かほ)の善悪(ぜんあく)を見べし。人は良友(よきとも)に身(み)の善悪(ぜんあく)をとひて しるべし。あしきを見て人よりいさむる事あらんに悦(よろこび)て聞(きく)。身持(みもち)を直(なを)さざる 人は悪敷(あしき)病を持て療治(りやうぢ)をきらふがごとし。又あしきを見て云(いは)ざるは誠(まこと)の 友(とも)にて有べからず。扨 友(とも)を求(もと)めんと思はゞ。我よりすぐれたると思ふ人をよく 見て常(つね)にしたしみまじはるべし。我に似(に)たる人を友(とも)とする事は益(ゑき)なき 事也。すぐれたる人にまじはらずは拙(つたな)き我身なをるべからず。いはんや我より おとる友(とも)ならば早(はや)く遠(とを)ざかるべし。無(なき)にはをとりつゐへ成ものなり ▲親(をや)の子をあはれむに誠のじひと。又あた成 慈悲(じひ)と有。誠のしひといふは 先 灸(きう)をくはへて病を治(ち)し。放埒(はうらつ)をさせずして藝能(げいのう)をつくべし。當ぶんは くるしけれども成長(せいちやう)しての悦(よろこ)び 数々(かず〳〵)なり。愚鈍(ぐどん)なる親は末(すへ)のかんがへもなく 當分(たうぶん)悦(よろこ)はせんと思ひて。甘(あま)き類(たぐひ)をくはせ。又一 切(さい)の食事(しよくじ)にあかす事故。五  臓(ぞう)をやぶりて一代の病者(びやうじや)となる。或(あるひ)は其内 死(し)するも有べし。灸(きう)はあつがるべし とてやかす藝能(げいのう)は氣づまりならんとておしへず。故(かるがゆへ)に無藝(ぶげい)ものと成て 恥(はぢ)をもかき事をもかく也。幼少(ようせう)の放埒(はうらつ)一生(しやう)なをらずして。先祖(せんぞ)の名をも下(くた)し かへつて親をも不 孝(かう)し。我身も置(をき)所なく。妻子(さいし)等(とう)にもなげかする也 ▲さしたる用(よう)もなきに人のもとへ行はよからぬ事也。用(よう)有て行たり共その 事はてなばとく帰るべし。久敷(ひさしく)居(ゐ)たるは。いとむつかし人にむかひ居ればことば             おほく身もくたひれ。心もしづかならず。萬つの懈怠(たいくつ)おこりて時をつい やし。たかひのために益(ゑき)なし。人中にまじはる事は大 事(じ)の物也。 我 覚(をぼ)えず して人え無礼(ぶれい)も有べし。又人より過分(くわぶん)のぶ 礼(れい)あれば堪忍(かんにん)しがたきもの也 【左頁上段 図 囲みの題】 酔眠欲(すいみんよく) 【商人が萬覚帳の傍で富の夢を見てまどろんでいる図】 ▲富貴(ふつき)なるはよけい他(た)へこぼるゝ物なれば。人の出入有てにぎやかとなり。 家うるほふ物也。され共その人 貪欲(とんよく)ふかく他(た)よりは非道(ひだう)の事にて。利(り) 錢(せん)を取。入れども人へは一錢(せん)もほどこさじとする類(たくひ)あり。かやうに不道(ふだう)に して富(とめ)る時はあやうくして。永(なが)く子孫(しそん)つゞく事なし。富(とむ)にしたかひて 人へものをほどこせば。人の出入つよくして敬(うやま)ふ物也。富(とみ)ても慈悲(じひ)なければ 人うとみて出入なくかへつてにくみそしる故。自然(しねん)に浅(あさ)ましき評判(ひやうばん)うくる物也 ▲富貴(ふつき)なる人貧(ひん)なる親類(しんるい)の所へは結構(けつかう)なるていにて行べからずとも人 大㔟(ぜい)にて行(ゆき)たりとも皆(みな)そとに置(をく)より外なし。只ひそかにして行べし 我富(わがとみ)成まゝに貧(ひん)成 親子(をやこ)のおり見舞(みまひ)なきと腹立(ふくりう)せり。大き成あやまり なり。働(はたらき)に隙(ひま)なく見まふ所へゆかず。道理(だうり)を考(かんが)へ見継(みつぎ)を送(をく)り遣(つか)はすが道(みち)成べし ▲貴人(きにん)より給る物をは辞退(じたい)せずして戴(いたゞ)くべし。返(かへ)すは礼にあらず又下より 上へ奉り物は軽(かろ)きものをつかふをよしとすべし。我と同じやう成心の人と 静(しづか)に物がたり仕(し)たるは嬉(うれ)しかるべきにさやうの人有まじければ多(おほ)くは氣(き)に あはざる人と出合(であひ)。少も違(ちが)はぬやうにと向(むか)ひ居(ゐ)たらんはひとりゐたるには はるかのおとり也。独(ひとり)ともし火のもとに書巻(しよくわん)をひらゐて見ぬむか【無我ヵ】の人を 友としたるこそこゆるかたなき慰(なぐさみ)にて心も清(きよ)まり。ちゑをもましてよし  古哥《割書:ニ》   尋ねくる友(とも)もうらめしひとりゐて。ちぎりさはらずたのむゆふへを ▲人に酒をしゐ呑(のま)する事よからぬ馳走(ちそう)なり。扨 数盃(すはい)しゐられて飲(のむ)人いと絶(たへ) がたくくるしみ。又は人の目あひを見て打すてんとしたり。或(あるひ)はにげんとするを とらへて無理(むり)にしゐ呑(のま)せぬれば。うるはしき人も忽(たちまち)狂人(きやうじん)のごとくに成也