翻刻
【右丁】
【小見出し】鶏(にはとり)鉾【▢で囲む】四条の南より出る
此 鉾(ほこ)唐土(もろこし)尭(けう)の御代に訴(うつたへ)あらん者は
この太鼓(たいこ)を打べし王直に聞
べしとて出しをかる
民(たみ)
其御心ばせをかんじて
終(つい)に公事(くじ)ざた【訴訟事件】なくおさまり太鼓うつ者も
なくこけむして太鼓に鶏すをくいたると也
【小見出し】山伏(やまふし)山【▢で囲む】
室町錦小路北より出る
○此山は大みね
入の体【躰】なり
【小見出し】琴破(ことはり)山【▢で囲む】綾(あや)小路新町の西より出 ̄ル
○此山は戴安道(たいあんだう)王晞(わうき)【「睎」が用いられているが、正しくは「晞」】が
使者にむかつて
琴をわりし
いはれなり
【小見出し】花盗人(はなぬすひと)山【▢で囲む】東洞院松原の北 ̄ヨリ出 ̄ル
○此山のいはれほうしやう
五郎と云一説にかぢはら
源太ゑびらの梅を折すがた共云
【右丁下段】
「ゆふかほ【源氏香の図・注】」【見出し語の上下左右に鉤かっこ】
此巻は歌の詞をもつて名と
せり源氏の十六歳の夏より
十月まてのことをしるす。源氏六条のみやす所
のもとへ忍ひてかよひ給ふ道のほど。五条あたり
を通り給ふに。ちいさき家にゆふかほの花のさき
かゝりたるをなにの花そと問(とひ)給へは。内より白き
あふぎにたき物の匂ひあるに。哥を書てたて
まつる〽心あてにそれかとぞみる白露の光(ひかり)
そへたる夕かほの花○此心はをしあて【当て推量】に源氏
の君にてましますよと。すいりやうして
みれは。夕かほの花の光もひとしほそひ
たるといふ心也けんしの御哥に〽よりてこそ
それかともみめたそかれにほの〳〵見ゆる
花の夕かほ○此心はちかくへよりてこそ何とも
見わくへきに。よそめはかりにて夕かほとさた
めたるはふしんなり。とかくしたしくなり
たきといふ心也。それよりをり〳〵かよひ給ふ。
源氏のすみ給ふ所へむかへんと思召折ふし。かの
六条のみやす所のおんりやうあらはれて。
夕かほのうへをそはれむなしくなり給へり
【左丁上段】
【小見出し】月 鉾(ほこ)【▢で囲む】
四条新町の東より出る
○此鉾は
三日の月也
【小見出し】傘鉾(かさほこ)【▢で囲む】
綾の小路
新町の東より出る
○せんぢやうしの
かさぼこといふ
是も壬生(みぶ)村より役者(やくしや)
はやし方の子共迄毎年出る
【小見出し】郭巨(くはつきよ)山【▢で囲む】俗に釜(かま)ほり山といふ
四条西洞院の東より出る
○此山の因縁(ゐんえん)は
郭巨といふ人母に孝
行成様。我(わが)子をうづまんとせしに
金の釜をほり出せし所なり
【小見出し】占出(うらで)山【▢で囲む】俗にあゆはひ上らう
といふ
○神功皇后(しんくうくはうごう)三かん
たいぢの時あゆを釣(つり)給ふ所也
【左丁下段】
若紫(わかむらさき)
手(て)につみ
て
いつし
かも
みむ
むら
さき
の
ねに
かよひ
ける
野(の)べの
わかくさ
【注 夕顔の図ではない。正しくは、右から二番目と三番目の縦線の上部を横線で繋いだもの】