翻刻
【右丁上段】
【小見出し】放下(はうか)鉾【▢で囲む】
新町四条の北より出る
◯此鉾は
放下(はうか)
師(し)の
人形あり
【小見出し】磐戸(いはと)山【▢で囲む】新町五条坊門の南より出る
◯此山の由来は天照太神そさの
おの尊(みこと)悪逆(あくぎやく)をなし
給ひし時 天(あま)の
岩戸(いわと)に入
給ふていなり
【小見出し】船鉾【▢で囲む】
◯此鉾の因縁は仲哀(ちうあい)天皇
三韓を攻(せめ)させ給ひけれ共
利なくして帰らせ給ひしを
重(かさね)て皇后(くはうごう)むかはせ給ひ
こまの国を打した
かへ給ひ高麗(かうらい)
の王は日本の犬也
と石壁(せきへき)に書給ふてい也
【右丁下段】
【見出し】「わかむらさき【別本にて】【源氏香の図】【見出し語の上部左右に鉤かっこ】【見出しを▢で囲む】
此巻は哥をもつて名つきたり。
源氏十七歳の三月よりふゆ
まてのことをしるす。源氏おこり【熱病の一つ。】をわつらひ給ひ
北山の僧都(そうづ)のいのりかぢのため尋をはしける
ついてに。女子の十はかりなるかすゞめ子をにがし
たるをなきて立たるがうつくしかりしを見そめ
給ひし。これ紫のうへ也是はおこりのかちせし
僧都のあねの孫(まこ)父(ちゝ)は兵部卿(ひやうぶきやう)の宮。藤つぼのみやの
めいご也。もとより藤つほと源氏と蜜通(みつつう)ありし
ことなれは。そのゆかりとおほし召て。ついに源氏の
むかへ給ひやしなひてふかき中となり給ふ。歌に
〽てにつみていつしかもみん紫のねにかよひける
のへのわかくさ◯此心は今紫のうへおさなけれは。
いつかおとなしくなり給ひてわかものにせんとの
心也。紫のとは古哥に紫の一もとゆへにむさし
のゝ草はみなからあはれとそみるといへる本哥
の心に。藤つほと源氏との中のゆかりなれば
ねにかよひけることよまれし也。紫のうへのいと
けなくてうつくしけれは。そたち給ふ行すへを
をおほしめす心なるへし
【左丁上段】
【見出し】十四日山之次第【見出し語の上下左右に鉤かっこ】
【小見出し】橋弁慶(はしへんけい)山【▢で囲む】四条坊門室町の東
より出 ̄ル
◯此山は源の牛若
むさし坊弁慶五条のはし
の上にて武芸(ふげい)をいどみける姿也
【小見出し】役行者(えんのきやうじや)山【▢で囲む】
室町三条の北より出 ̄ル
◯此山は役小角(えんのせうかく)かづらき山
にて鬼神をしたがへ給ふてい也
【小見出し】黒主(くろぬし)山【▢で囲む】室町三条の南より出 ̄ル
◯此山は大 伴(とも)の黒主其さま
いやしげに薪(たきゝ)おへる山人花の陰に
休めるがごとしと此心成べし
【小見出し】鈴鹿(すゝか)山【▢で囲む】烏丸三条の北 ̄ヨリ出
◯此山はすゞかの立ゑぼしと
いふ鬼を退治したる
さまをつくれり
【小見出し】悪(あし)ふさふ山【▢で囲む】六角烏丸の西より出る
◯此山は宇治川にて
三井寺の一来法師
筒井(つゝゐの)淨妙がかうべゝ
乗(のり)またぐかるわざの所也
【左丁下段】
末摘花(すえつむはな)
なつかしき
色(いろ)とも
なしに
なにゝ
この
す衛(え)
つむ
はなを
そでに
ふれけむ