翻刻
【右丁上段】
鯉/(こい)山【四角で囲む】室町六角の南より出ル
◯此山はもろこしの
りうもんの瀧に
鯉のほれるてい也
八幡/(まん)山【四角で囲む】
新町三条の南より出ヨリ出
○源氏のうぢ神
正八まんの宮ゐをうつし
奉るていたう也
観/(くハん)音/(をん)山【四角で囲む】新町六角下ル町又同通り
四条坊門下ル町此両町より
隔年に出す
二仏共に恵/(ゑ)心/(しん)の
僧都の作と云也
鷹/(たか)山【四角で囲む】
三条室町の西より出る
◯観音の像ハ
◯此山ハ鷹狩/(かり)の
ていをうつす也
俗にたるおひ山といふ
【右丁下段】
すへつむ花【小見出し】
此巻ハ歌と詞とをもつて名
つけたる也源氏十七歳の二
月より次の年の春まてのことあり。末つむ花と
申はひたちのミやと申せしその御むすめ
かすかなる住ゐにて居/(ゐ)給ひしを。源氏聞つたへ
ゆかしく思召てたつねたてまつられし也。此
ひめミやは色しろく髪/(かミ)長くはなたかく鼻/(はな)は
さきあかくやせ給ひて。心うき〳〵とせす。さる
ゆへに源氏の御歌に「なつかしき色ともなしに
なにゝ此すへつむ花を袖にふれけん」此心ハ
末つむ花ハべにの花とてさきをつむもの也
此ひめミやのはなのさきあかきを紅/(へに)の花に
たとへてよみ給ふ也。紅/(くれない)の色こき花と思ひて
たつねあひぬるに。かやうにかたちあしき人をは。
何のゆかしさにあひなれけんととのこゝろなり。
古歌によそにのミ見つゝや恋ん紅の末つむ
花の色にいてす共。源氏こうくハいのひとり
ことすよみ給ふ歌也。此巻の心ハたとへすかた
こそうまれつきたらめ心はへだにかくとかふセハ
見をとされましけれとの心に此巻をミるへし
【左丁上段】
舟鉾【四角で囲む】新町四条の
南より出る義式
七日に同し
◯此舟鉾俗に云
七日の舟ハ高/(かう)麗/(らい)の
出/(しゆつ)陣/(ちん)十四日の舟ハ
高麗をした
がへ給ひて帰/(き)朝/(てう)の
躰なりといふ
▲祇/(き)園/(をん)の会/(ゑ)。むかしハ鉾六十六本山百八十四有。おび
たゝしき事いふハかりなし。近/(きん)世/(セい)七日に山鉾共
三。十四日に山十ヲ。以上三十三ありといへども。
おびたゝしき事ハむかしにかハらず。」祭/(さい)礼/(れい)有七日
十四日両日也。先五月晦日の夜御一しや
四条宮河の辺/(ほとり)に出し奉りて水をそゝぎ塵/(ちり)
埃/(ほこり)を除/(のぞく)。其時/(じ)節/(せつ)しばゐの役/(やく)者/(しや)面/(めん)〃/(〳〵)の紋/(もんの)挑/(てう)灯/(ちん)
をともし。祇/(ぎ)園/(をん)町をへて。鳥井ぎハやろの中
を徘/(はい)徊/(くわい)す。御旅/(たび)所/(しよ)初ハ壬/(ミ)生/(ふ)のほとりに有
其後秀吉公の御時改/(改めてめ)て京極四条いまの御たび
所にうつされしなり。六月六日早/(さう)朝/(てう)山鉾/(ほこの)町人
六角/(かく)堂/(だう)に集/(しゆ)会/(ゑ)してミくじをとりミな〳〵
まつりのぎやうれつをさだむといへり
【左丁下段】
紅葉/(もみぢの)賀/(が)
物/(もの)思/(おも)ふ
に
たち
まふ
へく
も
あらぬ
身の
袖/(そで)うち
ふりし
心/(こころ)しり
きや