東京学芸大学「学びと遊びの歴史」を翻刻!

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女源氏教訓鑑 - 翻刻

女源氏教訓鑑 - ページ 33

ページ: 33

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【右丁上段】 て兄弟此世にありてこそ。兄のふかうも おそるべけれ。御身むなしく成給はゞ。不 孝(かう) とも勘当(かんだう)とも。誰かは我をしかるべき。迚(とて)も 不 孝(かう)の身とならば。御手にかけさせ給へと いふ。正儀はことばを出し侍ず。役人申やう。とかく 母さし図(づ)にて一人出し候へといふ。母おもひさだめ云(いふ)。 役人聞ふしぎや。をと〳〵は乳(ち)【「宛」にみえるが、誤記と思われる】のあまり【末っ子】とて。 おしみかなしむはづを切れとはいかにこゝろへず。 母なみだながら。さればいはれの候。兄はまゝ 子おとゝは我(わが)子なり。兄をころさば。まゝ子を にくみしと。草(くさ)のかげ成父の思はんもはづかし。 いかに正 儀(ぎ)もきけ。今まではまゝしきなか【なさぬ仲】を つゝみしなり。あらはさじと思へどかくなれば いひ聞(きか)す。わどの【吾殿=おまえ】三才の春より。朝夕(あさゆふ)育(そだて) 我子よりもいとをしく育(そたて)其内にせいしゆを まふけ。梅(むめ)さくらとたのしみへだてなく。す ぐししなり。此上は母ともに討給へと云(いふ)。あまり にいたはしく。此由そうもん申せしかば御門(みかと)聞召 元来(もとより)世守(せいしゆ)は世(よ)を守(まもる)といふ字なりと。国(くに)の あるじとなし。正儀を左の臣下(しんか)と成(なし)給ふ 誠に親子(しんし)兄弟 勇(ゆう)あり孝(かう)有る徳とかや 【右丁下段】 【見出し】あかし【源氏香の図】【見出し語の上部左右に飾り鉤かっこをつけ全体を▢で囲む。】 此巻は哥と詞をもつて名と せり。源氏廿六歳の三月より 廿七歳の秋都へかへり給ふ事まてあり。源氏 の君をあかしの入道(にうとう)のもとよりむかへたてまつる により。須磨よりあかしへうつり給ふ。入道よろこひ よくいたはりたてまつる。ついに入道のむすめ明石 のうへにあひなれ給ふ。むすめのすみし所はおかべの やとゝいふ。源氏そのかたへかよはせ給ふ道にて。 ある夜都のかたこひしく思召てよみ給ふ〽秋の 夜の月げのこまよわがこふる雲ゐにかけれときの まもみん○此心は古哥に久かたのつきけの駒(こま) もうちはやめきぬらんとのみ君をまつかな。といふ心 にて。秋の夜といふより月けと月にいゝかけて。この わかのる駒よ。月の雲ゐをめぐることくかけりてゆ かは。わか恋しき都に行て。思ふ人にあはんといふ心也。 入道の哥に〽ひとりねは君もしりぬやつれ〳〵と 思ひあかしの浦さひしさを○此哥の心は。君の 御ひとりにてゐ給ふにて。此かたのひとりねの さひしさを思し召しるやと。むすめのことを思はせ がほによめる也 【左丁上段】 【見出し】「四季(しき)の哥(うた)づくし」【見出し語の上下左右に飾り鉤かっこを付け全体を▢で囲む】    春           太上天皇 △初音とは思はさらなん一とせを   二たび来(きた)るはるのうぐひす △君が代の千とせにあまるしるしとや 基家公   春よりさきに春の来ぬらん △待(まち)あへずはるは来にけりたか為に 忠定   年のくれとてなをいそぐらん △山ふかみ春ともしらぬ松の戸を 式子   たえ〳〵かゝる雪の玉みず   内親王 △岩間とぢし氷(こほり)もけさはとけ初て 西行   こけの下水みちうとむ也 【注 この歌は鎌倉時代前期の公卿、西園寺実氏(さねうじ)の歌。】 【左丁下段】   澪標(みをつくし) かず   ならで なに   はの ことも  かひ なきに なに  みを   つく 思ひ  し  そめけむ