東京学芸大学「学びと遊びの歴史」を翻刻!

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女源氏教訓鑑 - 翻刻

女源氏教訓鑑 - ページ 34

ページ: 34

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【右丁上段】   夏 △夏の来てたゞ一重成ころもてに 為家   いかてか春を立かへるらん【注①】 △けふはよも花もあらしの夏山に 家隆   青葉ましりのみねのしら雲【注②】 △郭公こゑまつほどはかたをかの 紫   もりのしづくにたちやぬれまし 式部 △五月こは【注③】なきもふりなん時鳥  伊勢   またしきほとの声をきかばや △玉ぼこの【注④】みち行人のことづても 定家   たへてほとふるさみたれ【注⑤】の空 【注① 『風雅和歌集 巻四』所収の藤原為家の歌「夏きては たゞ一重なる衣手に いかでか春をたち隔つらむ」の歌と思われる。】 【注② 『壬二集』五二一番 藤原家隆の歌「今はよも花もあらしの夏山に青葉ましりの峯の白雲」の歌と思われる。】 【注③ 「そ」に見えるが正しくは「は」で「来(こ)ば=来れば の意。】 【注④ 「道」「里」などにかかる枕詞】 【注⑤ 「し」或は「ら」」に見えるが正しくは「さみだれ(五月雨)。】 【左丁上段】   秋 △秋(あき)きぬと聞より袖に露ぞしる 俊成   ことしも半(なかば)すぎぬとおもへば △秋のたつ朝け【注①】の衣打つけて 権中   やがて身(み)にしむ風の音かな     納言 △いつもふく同じときはの松風は 為藤   いかなる音に秋をしるらん △かたへ【片枝】さすおふのうらなし【注②】初秋に 宮内   なりもならずも風ぞみにしむ             卿 △吹(ふき)むすふ風はむかしの秋ながら 小町    ありしにもにぬ袖のつゆかな 【注① 夜明け方】 【注② おふの浦(生浦)でとれる梨。動詞「なる」の序詞として用いられる。「おふの浦」は所在不明。斎の宮の庄といわれる。梨を献じた。】   冬 △冬来てはひと夜(よ)二よを玉(たま)ざゝの 定家   葉(は)わけ【注③】のしもの所せきまで △音たてゝ木ずへをはらふ山風も 為世   けさよりはげし冬や来ぬらん △ふゆの来て山もあらはにこのはふり 成茂   のこる松さへみねにさひしき △さむしろ【注④】の夜半の衣手【袖】さえ〳〵て 式子   初ゆきしろしをのへの松【注⑤】              内親王 △冬こもり思ひかけぬを木(こ)の間より 貫之   花と見るまて雪そふりける 【注③ 「葉分け」=葉と葉のあいだを分ける事。また一枚一枚の葉に配り分けること。笹や竹にいうことが多い。】 【注④ 幅の狭い筵】 【注⑤ 『新古今和歌集』所収の歌には「をかのへの松(丘の辺の松)=丘のあたり」となっている。】 【右丁上段】 【見出し】「身をつくし【源氏香の図】【見出し語の上部左右に飾り鉤かっこを付け、全体を▢で囲む】 此巻は哥をもつて名とせり。 源氏の君明石より帰京(ききやう)の頃の とし廿八歳の十一月まてのことあり。源氏都へ 召かへされ給ひほどなくもとの位になりさかへ給ふ。 是みな住よしの御ちかひと思召。秋の比住吉 まうでし給ふ。折ふしあかしのうへもおさなくより 秋ことに住吉まうてし給ふに。たかひにまいりあひ。 それとしりて源氏よみてつかはし給ふ御歌に 〽みをつくしこふるしるしにこゝまでもめくりあひ けるえに【縁】はふかし【深し】な○此心はみをつくしとは。海や河 ふかき所に木をたてゝみを木【澪木(みおぎ)=澪標に同じ】とす。それを見て 舟をのぼせくだす也。たがひに身をつくして思ふ しるしに。かやうにめくり逢たるは。ふかきえんにて あるそとの心也。明石のうへかへし〽かすならぬ なにはのこともかひなきになと身をつくし思ひ そめけん○此心我身はかすならぬに。かやうに をよひなき人に思ひそめ。なにことにか身をつくす そと也。身をつくしのつもじすみてよむへし。 身をつくすといふ心なり。又なにはのことはなに ことゝいふこゝろなり 【左丁下段】   蓬生(よもぎふ) たづね    ても われ   より とはめ 道(みち)も  なく ふかき  よもぎが もと  の心(こゝろ)を