翻刻
【右丁上段】
左 素性法師(そせいほうし)
見わたせは
柳桜を
こきまぜて
都は【正しくは「そ(ぞ)」】
春のにしき成けり
右 紀友則(きのとものり)
夕ざれはさほの
かはらの川風に
をきまどはして
ちとり鳴(なく)也
左 猿丸大夫(さるまるたゆふ)
遠近(をちこち)のたつきも
しらぬ山中に
をぼつかなくも
呼ぶこ鳥【濁点(”が付いている】かな
右 小野小町(をのゝこまち)
わひぬれは身を
萍(うきくさ)のねをたへて
さそふ水あらば
いなんとぞ
【左丁上段】
ふくかと
みじか夜の ぞ
更行(ふけゆく) きく
みね
の まゝに
松 高砂(たかさご)の
風
左 中納言兼輔(ちうなごんかねすけ)
【散らし書き風に記しているので詠みにくいですが、「みじか夜の更行まゝに 高砂のみねの松風ふくかとぞきく」という歌です。】
右 中納言朝忠(ちうなこんあさたゞ)
あふことの絶(たへ)てし
なくば中〳〵に
人をも
身
をも恨(うら)みざら
まし
いせの海 今は
ちひろの 何(なに)
浜(はま)に てふ
ひろふ
かひか とも
有へき
左 権中納言敦忠(ごんぢうなこんあつたゝ)
【「いせの海のちひろの浜にひろふとも 今は何てふ かひか有へき」】
右 藤原高光(ふちはらのたかみつ)
かく計へ
がたく
みゆる世中に
浦(うら)山しくも
すめる月かな
【右丁中段】
【月の項には大きい○、日の項にはやや小さい○。】
奈良(なら)般若寺(はんにやじ)文殊(もんじゆ)
会(ゑ)○廿八日ひゑい
山にて山王まつり○
中午いなり明神御出
○四月○一日近江
筑摩(つくま)祭○きぶね
神事○八日ひゑい
山 花(はな)つみ諸寺にて
仏生(ぶつじやう)会○十四日
和州当麻(わしうたへま)ねりく
やう△初卯いなり
祭同卯日 摂州(せつしう)住
吉御神事△中申
山王祭△中酉の日
かもあふひまつり
○五月◯朔日
江州松本ひら野ゝ神
祭○五日かもの
けいばふし見藤の森
祭○七日今宮
の御出○十五日今
みや祭○十六日 永(ゑう)
観堂大般若(くわんたうだいはんにや)○廿三
【左丁中段】
日 清水(きよみづ)寺田村丸ゑ【会】
さかもと両社祭
○廿八日摂州住吉
御田うへ○晦日祇
園御こし【神輿】洗ひと夜
御こし一 基(き)四条宮
河のほとりに出し
奉りて水をそゝ
き塵埃(ちりほこり)をのぞき
侍るこれをみこし
あらひと申侍る
折からしはゐの役(やく)
者(しや)おのが家々(いへ〳〵)の紋(もん)
提灯(てうちん)をともさせて
御こしをしゆごし奉
いと興(けう)ある見物な
れば老若なんによ
くんじゆ【群集】し侍る
○六月◯朔日
氷室(ひむろ)の氷(こほり)を奉る
大坂天王寺 勝(しやう)まん
祭○五日きをん
会 鉾(ほこ)のわたり
初○六日同じく
【右丁下段】
【見出し】「せき屋【源氏香の図】【見出し語の上部左右に飾り鉤かっこを付け、全体を▢で囲む】
此巻は詞をもつて名とす
せき屋よりさとをはつれ出
たるとあるによつて也。源氏廿八才の九月の
事也。石山へまうて給ふ。折ふしうつせみの君は
つまのひたちのかみかくだるにつきて行しか。
此たひは又ついてのほるとて。せき山にてあひ
給ひしかは。むかしのことを思し召いてゝ。弟の
小君がまいりたるに。忍ひて御文あり哥に
〽わくらはにゆきあふみぢとたのみしもなを
かひなしやしほならぬうみ○哥の心わく
らははたまさか也。あふことは此あふみぢといふを
たのしみに。みづうみはしほのさらぬうみなれは。
みるめといふ草のなきことく。あひみる事の
ならぬよとの心也。うつせみのかへしに
〽あふ坂の関やいかなる関なれはしげきなげ
きの中をわくらん○此心はあふ坂の関はいか
なる関なれは。まいり逢てかくものおもひ
なけくことそといふ心也。あふ坂といへはあひ逢
はづ也。あふことはせきとめて。かく杉のむらたち【群って立つこと】
しけきか。ふたりの中をわけて物思はすると也
【左丁下段】
絵合(ゑあはせ)
うきめ
見し
その
おり
よりも
けふは
過(すぎ) 又(また)
にし
方(かた)に
かへる
なみだか
 ̄オクリガナしかへしにそ