翻刻
【右丁上段】
おどろ
秋来ぬと
目には
さやかにみえね共
かれ 風の音
ぬる にぞ
左 藤原敏于朝臣(ふぢはらのとしゆきあそん)【正しくは「敏行」】
右 源重之(みなもとのしけゆき)
風をいたみ岩
うつ波(なみ)の
をのれのみ
くだけて
物を思ふころかな
左 源宗于朝臣(みなもとのむねゆきのあそん)
常盤(ときわ)なる松
緑(みとり)も の
春くれば
今一しほの
色まさりけり
右 源信明朝臣(みなもとのふあきらあそん)【正しくは「さねあきら」】
恋しさはおなし
心にあらず共
こよひの月を
君(きみ)見ざらめや
【左丁上段】
きかまほしさに
今一 声(こゑ)の
郭公(ほとゝぎす)
くらしつ
行やらで山 路(ぢ)
左 源公忠朝臣(みなもとのきんたゝあそん)
しらべ初(そめ)けん
より
いづれのを
の松風かよふらし
琴(こと)のねにみね
左 斎宮女御(さいくうのにようご)
右 壬生忠岑(みぶのただみね)
子日【子の日】する
野へ
小松の に
なかり
せば
ためし ちよの
に何を引(ひか)まし【濁点あるは誤記】
右 大中臣頼基(おほなかとみよりもと)
一ふしに千(ち)よを
こめたる
杖なれは
つく共つきじ
君がよはひは
【右丁中段】
山(やま)のわたりぞめ
○七日ぎをんの
会○十日ゑいざん
ゑしん院源信忌○
十四日きをん御こし
くわんかう○廿日
くらま竹きり○廿
二日大坂座摩宮
まつり○天満天
神夏かぐら○晦日
堺住吉御はらひ
○七月◯七日京
北野 御手水(みたらし)神事
○九日《割書:今|明》両日洛
東 六道(ろくだう)参りまた
清水千日まふで
○十三日 宇治(うち)黄(わう)
はく山せがき○十
五日八はた安居(あんご)の
頭(たう)同洛東ちをん院
大せかき山門にて
行ふ此日三井寺へ
女人の参詣(さんけい)を赦(ゆるす)
○廿四日六地蔵参り
【左丁中段】
○八月○三日
堺(さかい)天神祭○五日
江州 白(しら)ひげ大明神
かい帳○八はた
放生会(はうじやうゑ)○十八日
上下御霊の祭り
○廿二日うつまさ
聖徳太子かい帳
○廿四日吉田木
瓜【こうり】大明神祭
○九月○四日
木はた祭○八日
せんゆふ寺舎利
会○九日伏見 御(ご)
幸(かう)【「香」の誤記ヵ】の宮祭大坂
生玉社祭○十日
五条天神祭○十
一日吉田 例幣使(れいへいし)
○十三日津のくに
住吉宝の市○
十八日池田くれは
祭《割書:十九日|あやば》○廿二日
大坂座摩祭○廿
五日天満天神宮の
【右丁下段】
【見出し】「ゑあはせ【源氏香の図 注】【見出し語の上部左右に飾り鉤かっこを付け、見出し語全体を▢で囲む】
此巻は詞をもつて名とせり
源氏三十歳の三月の事也
その比のみかとは源氏の忍ひて通ひ給ひて
まうけ給ふ藤つほの御子也みかとの御代
になりて源氏よろつをはからひ給ひいせひ
めてたかりし也みかとよのことよりも絵(ゑ)を好(この)
ませ給ふによりゑあはせといふことあり源氏は
須磨にて書をき給ひし御ゑをとり出で
あはせ給はんとて紫のうへにはしめて見せ
給ふことのをそかりけるをうらみて哥に〽ひとり
ゐてなかめしよりはあまのすむかたを書てそ
みるへかりける○此心は源氏は須磨にてはかくゑ
かき給ひてなぐさみ給ふこともありし我のみ
ひとりゐて物思ひしことなるにわれもゑを
かきてなくさむへき物をとの心也○源氏の御
哥に〽うきめみしそのおりよりもけふはまた
過にしかたにかへるなみたか○此心は源氏の
すまの浦へうつろひ給ひしうきわかれを見給ひ
し時よりもけふ此ゑをみてかなしく思ひ給へは
須磨のことなと立かへる心になりたるそとなり
【注 源氏香の図が違っている。正しくは右から二本目の線が上の横線とつながっていない。】
【左丁下段】
松風(まつかせ)
身(み)をかへ
て
ひとり
かゑ
れる
ふるさとに
聞(きゝ)し
に
にたる
まつ
かぜぞふく