東京学芸大学「学びと遊びの歴史」を翻刻!

コレクション: コレクション 1

女源氏教訓鑑 - 翻刻

女源氏教訓鑑 - ページ 38

ページ: 38

翻刻

【右丁上段】 天津風(あまつかせ)  帰ら       ざるべき   ふけゐの    浦(うら)にゐるたづの 雲(くも)   などか ゐに   左 藤原清正(ふぢはらのきよまさ) 右 源順(みなもとのしたかふ) ける  水の面(をも)にてる   月なみを 秋  かぞふれ  の    ば もなか成 こよひぞ 左 藤原興風(ふぢはらのをきかぜ)  誰(たれ)をかも知(しる)人に 高砂(たかさご)   せん   の  松もむかしの   友(とも)ならなくに 右 清原元輔(きよはらのもとすけ)  秋のゝの萩(はぎ)の     にしきを 鹿(しか)古郷(ふるさと)  のね   に ながら    うつしてしかな 【左丁上段】 左 坂上是則(さかのうへのこれのり) みよしのゝ山の   白雪    つもるらし ふるさとさむく    成まさる也 右 藤原元真(ふぢはらのもとさね) さきにけり我(わか)  古(ふる)さとの 卯花(うのはな)は    垣(かき)ねに きへぬ雪と見るまて 左 三条女蔵人(さんでうのによくらんど) 岩橋(いわはし)の   左近(さこん)  よるの契(ちぎ)りも      絶(たへ)ぬべし 明(あく)るわびしき    かづらきの神 右 藤原仲文(ふぢはらのなかふん) 有明(ありあけ)の月の光(ひか)り  を待(まつ)ほどに    我よのいたく 更(ふけ)にけるかな 【右丁中段】 【「月」の上には大きい○、「日」の上にはやや小さい○】 流鏑馬(やぶさめ)○晦日堺 住吉 神 送(をくり) ○十月○一日 《割書:今日より|十二日迄》ちしやく【智積】院に 論義○三日ひゑ い山元三大師の御(み) 影(ゑい)年中二ヶ月は 飯室(いひむろ)に有十ヶ月 は横川(よかは)に有両所に あんちする所今日に くしを取さだむ○五 日 達磨(だるま)忌○今日 より十五日迄浄土宗 寺々に十夜の念 仏を行(をこな)ふ○十日 興福寺(こうぶくじ)維摩(ゆいま)会 《割書:今日より|十六日迄》○十三日 日(にち) 連(れん)上人御 影講(ゑいかう)俗 にをめこといへり○ 廿日諸 商人(あきひと)ゑひ す講京極四条 官(くわ) 者殿(じやとの)【冠者殿】の社せいもん ばらひ ○十一月○八日 【左丁中段】 いなり大明神御火 焼俗にふいこ祭と 云○日蓮宗 十羅(じうら) 刹(せつ)【「殺」は誤記】女御火たき○十 一日 行事(ぎやうじ) 官(くわん)の内 太神宮御火たき ○十三日空也上人 忌○十八日《割書:上|下》御霊 御火焼○廿二日 《割書:今日より|廿八日迄》本願寺開山 忌○廿四日ひゑい 山三井寺あたごに 天台 大師講(だいしかう)○廿五 日《割書:今日より|廿八日迄》奈良 春日の御祭り ○午日祇園御火 たき○初の卯日 八はた御神楽也 ○廿八日清水寺 行叡(ぎやうゑい)忌○子の日 当月此日別して 大こくを祭るゑん ■也 ○十二月○一日 【右丁下段】 【見出し】「まつかせ【源氏香の図】【見出し語の上部左右に飾り鉤かっこを付け全体を▢で囲む】 此巻は哥と詞にて名つけたる 也。源氏三十歳の秋のこと あり。源氏あかしにてあひなれ給ひし入道の むすめ。ひめ君をうみ給ふて。みとせになりた りけるを。あまりとほくへたゝりたれは。京に のほり給へとおほせつかはされけれは。あかしのうへと 御はゝ君もろともに大井川のあたりにしるへ あれは。その所に家つくりしてすみ給ふ川 流すこく松風さひしけれは。あかしにて源氏 あふまでのかたみとてをき給ふこと【琴】をとり出 してひき給うに。まつ風のひゞきあひたれは あま君の哥に◯〽身をかへてひとりかへれる古 さとにきゝしににたるまつ風ぞふく○此心はこの はゝあま君はもと都の人なれは。いまあかし より入道ををきてふるさとへ帰るは生(しやう)をかえ たる心ちするに。なにこともむかしにかはりたる やうに思へとも。むかしきゝし松風の声のみ かはらすきこゆるとよめる也。その比源氏は。かつ らといふ所に御(み)堂をたて給ひ。念仏のために おはしけるついてに。大井へもわたらせ給ふ也 【左丁下段】  薄雲(うすくも) いりひ  さす みねに  たな   びく うす  雲は 物(もの)  思(をも)ふ 袖(そで)に   いろや まがへる