翻刻
【右上段】
千年(ちとせ)まで へし
かぎれる松も
万(よろづ) けふよりは
代(よ) 君(きみ)にひ
や かれて
左 大中臣能宣(おほなかとみよしのぶ)
右 壬生忠見(みぶのたゞみ)
焼(やか)ずとも草(くさ)は
もえなん
たゞ かすがのを
春(はる)の日にまかせ
たらなん
くれて行(ゆく) 霜(しも)にぞ
秋(あき)の 有(あり)けり
かたみに
わが をく
もと 物
ゆひの は
左 平(たいらの) 兼盛(かねもり)
右 中務(なかつかさ)
秋風の吹(ふく)に
付て
萩(はぎ)の も
葉(は) と
ならば はぬ
音(をと)は 哉
してまし
【左丁上段】
【見出し】「御所言葉(ごしよことば)」【見出し語の上下左右に飾り鉤かっこを付け全体を▢で囲む】
一小袖は○ごふく
一わたは○おなか
一よき【夜着】は○よるのもの
一どんすがや○どんちやう【上下の言葉が逆と思われる】
一こんにやくは○にやく
一とうふのかす○おかべがら
一ゆのこは○おゆのした
一しやうゆは○おしたし【おしたじ(お下地)】
一なすびは○なす
一よめがはぎ【「げ」は誤記】○よめな
【左丁中段】
一おびは○おもじ
一ゆぐは○ゆもじ
一かやは○かちやう
一へに【紅】は○おいろ
一めしは○ぐご【供御】
一さけは○九こん【九献】
一こめは○うちまき
一みそは○むし
一あま酒は○あま九こん
一五斗みそ○さゝじん
一こぬかは○まちかね
一もちは○かちん
一だんごは○いし〳〵
一せきはんは○こはぐご
一ちまきは○まき
一しんこは○しらいと
一とうふは○おかへ【御壁】
一でんがくは○おでん
一ぼたもち○やは〳〵
一そばかゆもち○うすずみ
一やきめしは○おみなめし
一ふのやきは○あさがほ
一さうめんは○ぞろ
一なめしは○はのぐご
【右丁中段】
けふは乙子の朔日と
て人の庶子(そし)たるは
其祝をなし侍る
○六日《割書:今日より|十九日迄》ちしやく
院のかいさん忌○十
九日《割書:今日より|廿一日迄》まきの
を御仏名(おふつみやう)会○廿二日
大徳寺かおさん忌○廿
三日一へん上人忌にて
時宗の寺々に法
事を修(しゆ)す○廿八日
鉢たゝき結願(けちぐわん)極(こく)
楽寺(らくじ)にておどり
念仏有○大晦日
夜に入て祇園の
神前にて大般若(たいはんにや)
転読(てんどく)子のこくより拝
殿にてけづりかけ
の神事始△節分
五条天神まふで
此やしろは少彦名(すくなひこなの)
命にして病難をは
すくひ給ふ神法にて
年中の災を払のける也
【右丁下段】
【見出し】「うすくも【源氏香の図】【見出し語の上部左右に飾り鉤かっこを付け全体を▢で囲む】
此巻は歌をもつて名つけたる也
源氏三十歳の冬より次の丗一の
秋まてのことあり。此うす雲の女院と申は藤つほ
と申し。人はかゝやく日の宮とも申したる也。その比の帝(みかと)は
けんじ藤つほに忍ひてまうけ給ひし御子なれ共。
父みかとゆめにもしらせ給はて。御いとをしみふかく。
十一歳の御とし御 位(くらゐ)につかせ給ふ。御母藤つほも
女院になり給ひけるに。御とし三十七にてかくれ
させ給ふ。けんしの御心のうち思ひやるへし。御哥に
〽入日さすみねにたな引うす雲は物思ふそてに
色やまかへる○此心は巻の詞にやまきはの木
ずえあらはなるに。雲のうすくわたれるかにびいろ【濃い鼠色】
なるを。なにことも御めとゝまらぬなれと。いと衣に
おほさるとある也。けんしの君この比は御うれひに
しつみ給へは。たとひうつくしき花もみちにも中〳〵
御めのとまるへきことならねとも。此雲のうき〳〵と
さすたなひけるが折にあひてはわか心のことく雲
も物を思ふにやと心なき物に心をつけ給ふことは。
ふかきうれひの心なり。かゝやく日のみやと申せ
しかは。入日さすとよみ給ふもよせある也
【左丁下段】
朝顔(あさかほ)
みし
おり
露(つゆ) の
わすら
れぬ
あさ
がほ
の
花(はな)
の
さかりは
すぎや
しぬらん