翻刻
【右丁上段】
○十 種香(しゆかう)といふは香盆(かうぼん)に香(かう)の名(な)書(かき)たる
札(ふだ)と筒(つゝ)とをそへ出(いだ)すいづれの香といふ
事を聞覚(きゝおぼ)へ札(ふだ)の名をたづね筒(つゝ)へ入る也
○香(かう)を聞時(きくとき)手にかほりをまねき手を
かざしなとするは見ぐるしたゞ何となく
きゝたるがよき也○香をきく時えんに
ゐるとも内へ入てきくべし風をいむ也
○香は一焼といはす一 種(しゆ)と云○香の跡(あと)に
薫物(たきもの)焼(きく)時は銀盤(ぎんばん)をかへてたくなり
【見出し】掛香(かけがう) 匂(にほ)ひ袋方(ふくろのはう)【見出し語を▢で囲み上下左右に飾り鉤かっこを付ける】
【左丁上段】
○あたらしき小袖にとめ給ふには
あつき湯の中に置とめてよし其
いげ【「ゆげ(湯気)の変化した語】にてよくとまるなり
△掛香名方(かけかうのめいはう)○梅花(ばいくは) 龍脳(りうのふ)《割書:八分》
梅仁(ばいにん)《割書:一匁二分》麝香(じやかう)《割書:六分》丁子(てうじ)《割書:二匁》
甘松(かんせう)《割書:三匁》白檀(びやくだん)《割書:二匁》○あやめ 沈(ちん)
香(かう)《割書:一匁》丁子(てうじ)《割書:八分》白檀(びやくだん)《割書:一匁|二分》甘松(かんせう)《割書:八分》
麝香(じやかう)《割書:四分》龍脳(りうのふ)《割書:一分》○よもきふ
麝香《割書:二匁》龍脳《割書:三匁》菊花《割書:五匁》
○にほひ袋 丁子(てうじ)《割書:二匁》薫陸(くんろく)《割書:一匁》伽(きや)
羅(ら)《割書:一匁三分|さめ■■【かわヵ】おろし》白檀(びやくだん)《割書:二匁》甘松(かんせう)《割書:五匁》龍(りう)
脳(のふ)《割書:五匁》麝香(じやかう)《割書:四匁》茴香(ういきやう)《割書:五分》○又方
甘松(かんせう)《割書:五匁》麝香(じやかう)《割書:五匁》白檀(ひやくだん)《割書:五匁》龍(りう)
脳(のふ)《割書:一匁》丁子(てうじ)《割書:五匁》○亦方 白檀(びやくだん)《割書:三匁》
丁子(てうじ)《割書:一匁》龍脳(りうのふ)《割書:三匁》麝香(じやかう)《割書:三匁》甘(かん)
松(せう)《割書:三匁》薫陸(くんろく)《割書:少》《割書:△右三色ともに何れ|も御所名方の抜書也》
【右丁下段】
【見出し】「おとめ【源氏香の図】【見出し語の上部左右に飾り鉤かっこを付け全体を▢で囲む】
此巻は詞と哥とをもつて名とする
也源氏三十二の四月より三十四の
十月まて見えたり此乙女といふことは五節(こせつ)の舞姫(まひひめ)
にていへり五節とはむかし清見(きよみ)はらの天皇(てんわう)よしの
の宮に御ざありし時日のくれかたに琴(こと)をたんじ【別本にて】
御心をすまし給ふ時にむかひの山のみねよりあや
しき雲の中に天女(てんによ)のすかたあらはれて御ことの
しらへにあはせてうたひけるをみかと御らんしけるに
天女の袖をひるかへすこと五たひなりけりそれに
より此舞をうつして毎年(まいねん)十一月にわかき舞姫を
五人出してまはせらるゝこと也このたひ源氏よりは
御めのとのこれみつよしきよのむすめを出し給ふ
これみつかむすめ舞ことにすくれてみな人かんし
たり源氏の御哥に〽をとめ子も神さひぬらし
あまつ袖ふるきよのともよはひへぬれは○此心は昔(むかし)
五せつの舞にあひ給ひし人を思し召てつくしの
五せつのかたへよみてつかはし給ふ也神さひぬらし
とはひさしき心也むかしの舞の時は君もわれも
わかゝりしか今はともにとしへぬれはふるきよのとも
とはわれをそみ給なんとのこゝろなり
【左丁下段】
玉葛(たまかつら)
恋(こひ)わた
る
身は
それ
なれど
玉
かづら
いか
なる
すぢを
尋(たづね)
きぬ【「つ」とあるところ】らん