東京学芸大学「学びと遊びの歴史」を翻刻!

コレクション: コレクション 1

女源氏教訓鑑 - 翻刻

女源氏教訓鑑 - ページ 45

ページ: 45

翻刻

【右丁上段】 ○雲霧(くもきり)もへだてやはせん相(あひ)思ふ 季信  ほしの逢(あふ)よの中の契(ちぎ)りに ○夕部(ゆふべ)〳〵秋の露さへをきそはる 雅庸  袂(たもと)もこよひほしあひのそら ○七夕のあふ夜たえせぬ初秋に   時量  ともす火 影(かげ)や空(そら)にしたしむ ○暮(くる)るをや猶いそぐらん天の川  雅房  待わたりぬるけふの舟出(ふなで)に ○天の川月のかつらのさほさして  雅景  星や舟出をさぞいそくらん ○うく事もしらずや星の手向(たむけ)草  よみ人  この七種は花もましらず     しらず ○花すゝきまねく袂はをり姫の  道晃  つままつ宵のこゝろをやしる ○今宵あふ星の手向と秋はぎの  雅景  花のにしきのひもやとくらん ○七夕の手にもおとらずけふ待て 弘資  をりはへけらし萩のにしきも ○天の河わたせさやけき夕月の  仙洞  ひかりや星の妻むかえふね 【左丁上段】     契り   枕      もら   よ     すな    り     七夕      の    ほか           しる 一          人も  夜         なし   とて ○織女のまれの舟出もみなれ竿(さほ) 道晃  さすがなれぬる道はたとらし ○寐(ね)ぬる夜の明るやつらき七夕の 公理  あふせは絶(たへ)ぬちぎりながらも ○天の河色づき初てほのめけば  光離  月や紅葉の御ふねなるらし ○恋わたる思ひもはれずふる雨に 経慶  ちぎりかひなきかさゝぎのはし ○萩薄(はぎすゝき)ふたつの星に手向をきて 通村  いづれか秋と空にとはゞや 【右丁下段】 【見出し】「ほたる【源氏香の図 注】【見出し語の上部左右に飾り鉤かっこを付け全体を▢で囲む】 此巻は詞と哥とをもつて名つけ たる也。源氏三十六歳の五月のこと あり源氏玉かつらをむかへとり給ひもてなし給ふに 兵部卿(けんしの御おい也)の宮玉かつらをかきりなく御心をかけ給ひて五 月四日の夜忍ひてをはしけるにけんしは玉かつらの 御かたちのすくれてうつくしきを宮(匂)に見せ申て 心をつくさせ申さんとてその夕つかたほたるをおほ く取あつめてきちやうのかたひらにつゝみて光に つけてほのかに御かたちを見せ給ひけれは兵部卿 の御哥に〽なくこゑもきこえぬ虫の思ひだに人のけ つ【消つ】にはきゆる物かは○此心はなくこゑも聞えぬ虫の思ひ とはほたる也そのおもひたにけすにけされぬ物也 いはんや人の思ひは音をたつる物なれはいよ〳〵うち けされましきとの心也おもひはほたるの火によせて いへり 玉かつらかへし〽声はせて身をのみこかす ほたるこそいふよりまさる思ひなるらめ○此心はことはに いゝ出していへはなくさむこともあるへしたゝ音に たてぬほたるの思ひよりふかく見え侍れみやはかく哥を よみて思もなくさみ給ふへけれわか身は蛍のことく 音をなかねは猶まさり侍るといふ心なり 【注 図が違っている。正しくは、二、四、五番目の線が頭部で繋がる。】 【左丁下部】  常夏(とこなつ) なでし   この  とこ   なつ   かしき 色(いろ)を  見ば もとの  かき    ねを 人(ひと)や尋(たづね)む