翻刻
【右丁上段】
△他(よそ)へ行状 折紙(をりかみ)の内を見る事。人のまへにて汗(あせ)
ぬぐふ事。人の家内(けない)へむさと出入(ている)事。人の前にて
爪(つめ)をきり髪(かみ)をすきあるひは他の小刀はさみ
にて爪(つめ)をとり又は剃刀(かみそり)などかりながらぬぐはず
してかへす事
△他のはきものをむさとはき。又ははきちがへ。或は
上(うへ)をふむ事。人の寝(ね)たゝみ。ねむしろをふみ。又は
枕(まくら)をこへまたぐる事
△他の雑談(ざうたん)をかたりなをし。或は雑談(ざうたん)のうちに
又べちの物がたりする事
△他の盃(さかつき)いたゞかずしてのみ。又終はる肴字(さかな)戴(いたゞか)ず
して喰(くふ)事。我(わが)さかづきふかずして主へさし
又は貴人(きにん)の盃 長(なが)ひかへする事
△酒(さけ)のなかばにむさとたつ事。盃(さかつき)の出たるをみて
立事。酌(しやく)に立又は膳(ぜん)をすゆる【据える】時身をかき口(くち)を
きく事。膳をひきく【ひくく(低く)に同じ】持(もち)すへあるひはかた手にて
持(もち)すゆる事
△人のゆかたにてむさと身をふく事。天 気(き)よきに
ぼくりはく事。分(ぶん)なくして上 座(ざ)このむ事
△ゐぶり【ふてくされ】けんどん【無愛想】にして親(をや)にさからひあなどり
おそろしといふ事もしらず。みだりにのゝしり
あくこうをいふ事
【左丁上段】
△親にふかうの事 兄弟(きやうだい)にさからひ喧(けん)𠵅(くわ)する事
しうと姑にふかうにあたる事是第一おんなの
たしなむべき事なり。継子(まゝこ)をにくみそねたむ【ママ】
事けだし継子継母(けいしけいぼ)と成は親子(をやこ)ともに生前(しやうぜん)の
災難(さいなん)なり本脈をきりて他脈をつぐ本水にいたる
事やすからず。此心を明(あき)らめ天の命(めい)ずる所。我
をしてかくあらしむと人我を忘れて慈孝(じかう)あ
らば本脈本水にかへりて親子ともに人我(じんか)の
くるしみをまぬがるべしとなり
△其外たしなむべきしな〴〵りんきのふかき
大ぐちのはしたなき事男まじりのみだり
【右丁下段】
【見出し】「かゝり火【源氏香の図 注】【見出し語の上部左右に飾り鉤かっこを付け全体を▢で囲む】
此巻は詞と歌とをもつてな付
たり。源氏三十六歳の秋の初
のことをしるしたり。けんし玉かつらの君を御子
にしてもてなし給ふといへとも。まことの御子なら
ねは。御心のうちには夕かほの御かはりにもと
思し召て。なつのよの月なき比。かゞり火とほ
して御琴なとしらへ給ひ。ことをまくらにそひ
ふし給へり。けんしの御哥に〽かゞり火に立そふ恋の
けふりこそよにはたへせぬほのほなりけり【ママ】○此
かゝりとは松あかしの事也哥心はわか玉かつら
を思ふは此かゝり火にもをとらさるを。なげやりに
見給ふ事よ。わか思ひの火はかゝり火に立そふなり。
かゝり火はたつやうなれ共きゆるもの也。我思ひ
の火はきゆる時もなきといふ心也。玉かつらの御
哥に〽行ゑなき空にけちてよかゝり火のたよ
りにたくふけふりとならは○此心はかゝり火の
けふりは。空にのほりてやかてきゆるもの
なれは。源氏のかゝり火にたちそう恋の煙と
よめるをうけて。かゝり火のけふりのたぐひならは
思ひけし給へ。人のあやしと思ふへきとの心也
【注 源氏香の図が違っている。正しくは右から二、四番目の線が頭部で繋がっている。】
【左丁下段】
野分(のわき)
風(かぜ)さ
はぎ
むら
くも
まよふ【「まがふ」とあるところ】
ゆふべ
にも
わするゝ
まなく
わすら
れぬ君(きみ)