東京学芸大学「学びと遊びの歴史」を翻刻!

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女源氏教訓鑑 - 翻刻

女源氏教訓鑑 - ページ 48

ページ: 48

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【右丁上段】 なるふるまひ夫(をつと)の留主(るす)に若きをのこをよび あつめ雑談(ざうたん)はなし大わらひ。大ざけのほしゐ まゝなる。大食のさもしげるり。たばこをのむ すゝ成に哥(うた)をうたふばし【注①】なる。しばゐずきの いたづらげ成 朝寐(あさね)のきずい【気随】なる。身持(みもち)のむさく【不潔である】 あじやら【たわむれ】ふかふて腹立(はらたて)よくたん気にていぶり【すねること】 なり。麁相(そさう)にて道具(たうぐ)をわる。手あらふしてかさ 高(だか)なり。物をなぐりてじだらくなる。よくふかく してまんがち【自分勝手】成しはく【思惑】して義理しらずあだ くちきいて言葉(ことば)おほく。中ごと【中傷】いひて喧(けん)𠵅(くわ)の 行司(ぎやうし)けんどん【無慈悲】にて愛相うすく。がまんにて物 ねたみ大へいにてじまんなる手ぼめ【自分で自分を褒めること】にして人の物をけなし。かまびすしく人事いひて物を うらみ。ぶんざいよりよき物をこのみいたらぬ形(なり) をいたらしたがり。或はぶしやう【不精】只居(たゞゐ)をこのみその 身の顔(かほ)のむさきをもかまはず手足(てあし)の爪(つめ)は毛(け) 鳥(てう)のごとく。まゆは男にひとしくひたいをたれし 事なければ灰猫(はいねこ)のごとく髪(かみ)ゆはず歯黒(はぐろ)せず 貧成(ひんなる)後家(ごけ)の有様(ありさま)笑止(しやうし)なり。かつうはつく夫(をつと)を のらふにひとし。其外女の身におふぜぬかた ぬき【肩脱ぎ】ちからわざなど好(この)むやから。此等(これら)のあら まし女はつゝしみたしなむべきわざなり 【注① 言行が軽はずみで、せっかちで、品のないさま】 【右丁下段】 【見出し】「のわき【源氏香の図】【見出し語の上部左右に飾り鉤かっこを付け全体を▢で囲む】 此巻は詞をもつて名とする 也。源氏三十五歳の八月の こと也。折しも大風ふきて。物さはかしくかきつる 地ふきたふし。すさましかりしこと也。あきふく 大風をのわきといへり。暴風(のわき)と書也。けんしの御 子夕きりの大将どのいまだ中将にてをはし ましゝ比。御いとこの姫君雲ゐのかりとよまれし をふかく御心をかけ給ひて。風のまぎれにあかし の御はらの姫君のかたへ参り給ひて硯紙(すゝりかみ)こひ 雲(あせちの)ゐのかりへ(大なこんの女かしは木のめい也)御文つかはし給ふ。風のふき折たる かるかやのえたにつけて。かみはむらさきのうす やうなり哥に〽風さはきむら雲まよふ【「まがふ」とあるところ】ゆふへ にもわするゝまなくわすられぬ君○此心は かやうに野分の風さはかしく。大空にむら雲の 立まよふ夕へにもわするゝまもなし。いはんや つね物しつかなるころを思し召やり給へとの心也。 此うた何のせんなくきこえたるまゝにてふしもなけれ とも。うたをよまんにかゝる所に心をつくへき也。 此巻野分といふは巻の詞に野分例の年よりも おどろ〳〵しくなとあるをもつていへる也 【左丁上段】 【見出し】「緒病之薬方(しよひやうのやくはう)【見出し語の上部左右に飾り鉤かっこを付け全体を▢で囲む】 ▲打疵(うちきす)のくすり○夏枯草(かこさう)を口にてかみ たゞらかし付ればいたみとまりなをる也 ▲切疵のくすり○五ばいしをなまにて くだきかはかし粉(こ)にしてひねりかくれば 血(ち)をとめいたみなくしてゐゆるなり ▲血(ち)とめ薬○にうかう◯ぼれい◯したん 鶏(にはとり)の玉子を打わり白みをさらに入れ日に ほしてこそげ粉(こ)にし各々 等分(とうぶん)に合付べし ▲頭(つふり)に瘡(かさ)出来うみ血かみの中へながれて いたむに◯山帰来(さんきらい)をせんじ一 廻(まは)り飲(のむ)べし ▲■(はす)【疒+蓮】根(ね)【注②】の妙薬(めうやく)◯わうばくを粉(こ)にして さと芋(いも)にすりまぜ◯じや香(かう)少しいれ はこべの汁(しる)をしぼり入かみの油にてよく ねりまぜて。其大さほどに紙(かみ)をむしり あつくのばし付べし。うみすひ出しいやす ▲しらくぼ【注③】は○梅ぼしの実(たね)をさり。松やに の粉(こ)餅(もち)米の粉右三味 等分(とうぶん)に能(よく)すり 合せよき酢(す)にてときつくべし 【注② 小児の頭部または臀部などにできる一種の瘡(かさ)】 【注③ 「しらくも(白禿瘡)」に同じ。頭の毛のはえる部分にできる、えんどう豆大の白色、灰白色円形の伝染性発疹。軽いかゆみがあり、かくと白い粉が落ちてくる。】 【左丁下段】  御幸(みゆき) をし   ほ   山(やま) みゆき  つも   れる 松(まつ)ば   らに けふ  ばかり     なる 跡(あと)や   なからん