東京学芸大学「学びと遊びの歴史」を翻刻!

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女源氏教訓鑑 - 翻刻

女源氏教訓鑑 - ページ 51

ページ: 51

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【右丁上段】 もぎ【河原艾 注①】の葉(は)にて灸(きう)を一ツすゑ。てよし ▲狐臭(わきが)の妙薬◯ろくせう【鹿茸 注②】○ぶし【附子 注③】◯けいふん【軽粉 注④】 白(びやく)じゆつ【白朮 註⑤】《割書:くろ|やき》各々等分酒にてよくねりて 脇の下の毛をぬき。よくあらひ。絹(きぬ)につゝみ ひたもの【ひたすら】ぬるべし。いつとなく香(か)うせる物也 ◯又田にしを取。口へ巴豆(はづ)【注⑥】の粉をすこしづゝ ひねり入ればあはをはく物也。右のことく脇(わき) の下の毛をぬき能(よく)あらひ田にしのあはを付 ればたゞれ痛(いた)むなりいたむ間はいくか【幾日】にても 其まゝ置(をき)かゆく成ときゆにて洗(あらひ)おとし 丹礬【「胆礬」の誤用。硫酸銅】《割書:大》はらや《割書:中》【水銀粉 注⑦】鹿(しか)のふくろ角(づの)《割書:小》【注②参照】三味 粉にして付べし一代わきがの根をきる也 ▲ねあせには◯五倍子(ごばいし)【注⑧】を粉(こ)にして水にて練(ねり) へその中によくつめてふたをし。そのうへに 腹帯(はらおび)をして臥(ふす)へし。二三夜もかくのごとく すればいつとなくねあせかきやむもの也 ▲鼻血(はなぢ)にはりうこつ【龍骨 注⑨】の粉をはなにふき入 てよし◯又天南星(てんなんしやう)【前コマ注⑥参照】をくだき食飯(そくい)にて能(よく) ねりまぜ。あしのうらに付れば忽(たちまち)とまる也  ▲ほねたがひ【骨違い=脱臼】には◯石灰(いしばい)◯楊梅皮(やうはいひ)【「やまもも」の漢名】粉(こ)にして 【注① キク科の多年草。本州、四国、九州の河原や海岸の砂地などに生える。漢方医学では、利尿薬、駆虫剤、かぜ薬などにする】 【注② ろくじょう=鹿の袋角(ふくろづの)。春に鹿の角が落ち、夏に出る新しい角でまだ皮をかぶっているもの。】 【注③ トリカブトの根を乾燥させたもの。強心、利尿、鎮痛などの目的で使われる。毒性が強い。】 【注④ 水銀、食塩、にがり、赤土をこね合わせ、加熱して得られた昇華物。本質は塩化第一水銀。駆梅、利尿、抗菌作用がある。はらや。】 【注⑤ オケラ(朮)の若根の外皮を除き、乾燥して製した芳香性健胃薬。白散(びやくさん=屠蘇酒などととともに元日に服用した散薬)などに用いる】 【注⑥ 常緑小高木。巴豆油の原料にされ、また下剤に用いられるが、猛毒がある】 【注⑦ 軽粉のこと。またこれを原料とした化粧品。古くから上流階級に愛用されたので「御所おしろい」と呼ばれた。】 【注⑧ ヌルデの葉茎にできる虫こぶ。ヌルデミミフシが寄生して生じるもので、薬用として用いられるほか、染色やインク製造に用いられる。】 【注⑨ 古生物の化石。古くは薬として用いた】 【左丁上段】 等分(とうふん)を紺(こん)屋のり【注⑩】にて練(ねり)まぜ付る◯又小麦(こむき) の粉に鶏(とり)の玉子を押(をし)まぜてつくるもよし ▲心痛(むねいたむ)には◯延胡索(えんごさく)【注⑪】を粉にして酒にて呑(のめ) ば。いか程(ほど)の心痛(しんつう)にてもいたみを治(ぢ)す奇妙(きめう)也 ▲漆負(うるしまけ)には爪白(つまじろ)のかにと餅米をすり鉢(ばち) にてよく摺(すり)まぜて付べし是めいよう【注⑫】の薬也 ▲気種(きしゆ)【できもの、はれものの類】のくすり◯ほとゝぎすの黒 やきごまのあぶらにてとき付てよし ▲行纏瘡(はゞきがさ)【前コマ注①参照。記事が重複】のくすり◯五倍子(ごばいし)をよくいり 粉にして苗(なへ)の霜(すみ)を加(くわ)へごまの油で練(ねり)付べし 【注⑩ 紺屋糊=紺屋で型染めの型を置くのに用いる糊。粳(うるち)、糯米(もちごめ)などに、米糠を加えて製したもの。】 【注⑪ ケシ科キケマン属の草のうち、花が紫色ないし白色で地下に塊茎をもつものの総称。地下茎を干したものは鎮痛剤とされる】 【注⑫ 「名誉」の変化した語。世にまれなこと。不思議なこと】 【右丁下段】 【見出し】「まきはしら【源氏香の図】【見出し語の上部左右に飾り鉤かっこを付け全体を▢で囲む】 此巻は哥をもつて名つけたる也。 源氏三十七歳の十月より卅 八のあきまての事あり。巻はしらといふことは。 玉かつらの内侍ひげくろの北のかたになり給ふ也。 ひけくろのもとの北のかたは。ものゝけつきておは せしか。ひけくろの玉かつらのもとよりかへり給 はぬにより。北のかたはさとへもどり給はんとし 給ふ。その御むすめ十二三になり給ふか。哥を書て はしらのすこしわれたるゆへかうがひのさき にてをし入給ふ 〽いまはとて宿かれぬともなれ きつるまきのはしらよわれをわするな◯此うた よりまきはしらの君といへる也。やとかれぬともとは。 いま宿をはなれゆくとも。わかよりゐたる柱よ 我をわすれなとの心也◯北のかたの哥に〽なれ きとは思ひいつともなにゝよりたちとまるへき まきのはしらそ◯此心ははしらは無心(むしん)のもの也。 その心なきものも。なれきつることをあはれと 思ひいつることありとも。此やとりにとまるへきわか こゝろにてはなきそとの心也。たちとまるへきとは はしらのゑんによめるなり 【左丁下段】  梅枝(むめかえ) 花(はな)のかは ちり  にし 枝(えだ)に  とま らね   ど うつらむ  袖(そで)に あさく  しまめや