東京学芸大学「学びと遊びの歴史」を翻刻!

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女源氏教訓鑑 - 翻刻

女源氏教訓鑑 - ページ 52

ページ: 52

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【右丁上段】 【見出し】「女こし気(け)の薬方(やくはう)【見出し語の上部左右に飾り鉤かっこを付け全体を▢で囲む】 ▲女 帯下(こしけ)の薬◯梅(むめ)ぼし七ツ。昆布(こんぶ)壱匁と。 黒焼(くろやき)にし。はらや【前コマ注⑦参照】五分入右三色●是程【上の黒丸の大きさをさすと思われる】に 丸じ。絹(きぬ)につゝみ。糸を付。ゆぐ【湯具=腰巻】にむすび付 右の薬を前に入置べし。三日ほどをけば 色々の悪物(あくもつ)くだる物也◯又 蛇皮霜(じやひのしも)◯へび のぬけがらのしらやきの事也。なもみ【植物「おなもみ(葈耳)」の異名】。各一両 めうばん半両。絹につゝみ。前に二三日入置て。 又取かゆべし。五七日の内になをるなり ◯又 地黄(ぢわう)【注①】川芎(せんきう)【注②】当帰(たうき)【注③】芍薬(しやくやく)各(をの〳〵)二分 ゆづりはニ両。右五味せんじ飲(のみ)てよし ▲前(まへ)と尻(しり)との間(あいだ)《割書:ありの|とわたり》にかたまりいで くる事あり。此薬は○遠志(をんじ)【注④】の根(ね)を粉(こ)にし 古酒(こしゆ)にてねり付べし◯又 鹿(しか)の角(つの)を焼(やき) 粉(こ)にして水銀(みづかね)と等分(とうぶん)にし。かみのあぶら にてすり合付べし。何ほど久しく共治(ぢ)す。 其侭(そのまゝ)すて置(をけ)ば後(のち)に腫物(しゆもつ)と成 死(し)す物也 ▲しら血(ち)【注⑤】長(なが)血【注⑥】の薬◯塩鶴(しほつる)【鶴の肉の塩漬け】を黒やきにし 白湯(さゆ)にて用てよし奇妙(きめう)の名方(めいはう)也 【注① ゴマノハグサ科の多年草。根は漢方で地黄といい、補血、強壮薬に使われる。】 【注② セリ科の多年草。根茎を頭痛、鎮静薬に用いる。おんなかずら。】 【注③ セリ科の多年草。漢方では根をいい、強壮、鎮痛、婦人病に効くという。】 【注④ 漢方薬の一つ。ヒメハギ科の多年草イトヒメハギの根を乾かして作った生薬。強壮、袪痰、鎮痛剤として用いられる。味は苛烈。】 【注⑤ 婦人病の一つ。膣から分泌される白色の液体が増えて膣外へ排出されるようになった状態をいう。こしけ。】 【注⑥ 子宮から長期間の不規則な出血をみること。】 【左丁上段】 ▲前の中(うち)に瘡(かさ)出来いたむには◯掃木(はうきゞ)の実(み)【注⑦】を せんじあらひ。きやうにん【注⑧】の黒焼(くろやき)を粉にして かみのあぶらにてねり付てよし。同前に瘡(かさ) 出るには。硫黄(ゐわう)を粉(こ)にし付てよし又もゝの 花をすりてわたに包(つゝみ)まへに入れ置もよし ▲前にほひくさきには◯小豆(あづき)の花のかげ干と ゑのみのあかきを取すりまぜ丸め入置べし ◯又 韮(にら)をせんし七日あらひなでしこの根(ね) をせんじ。是も七日 程(ほど)あらへばなをる也 ▲前はれいたむには菊(きく)の若苗(わかなへ)をよく摺(すり) あつ湯(ゆ)にかきたてゝあらふべし◯又 馬鞭草(ばべんさう)【植物「くまつづら(熊葛)」の漢名。】をすりてひたものぬれば痛(いたみ)を治(ぢ)す ▲前にしらみわきたるにははらや【前コマ注⑦を参照】をごまの あぶらにてときてすりぬりて。きめう也 ▲前やぶれいゑざるには石灰(いしばい)をせんして 度〳〵あらひてよし◯又 黄檗(きわだ)を粉にし ふりかけてよし又 雄黄(おわう)【49コマ注②参照】の粉ひねりかけて吉 ▲前かゆき事。そこに虫(むし)有ゆへなり。紅花(こうくわ) を末(まつ)【抹す=粉末にする】しのりにて大 指(ゆび)の長さにかため。すゝし【すずし=生糸を織ったままで練っていない絹布。軽くて薄い。】 につゝみまゑに入置べし則いゆる也 【注⑦ 箒木。アカザ科の一年草。果実は扁平な球状で、漢方で地膚子(じふし)といい、煎じて強壮、利尿剤とする。】 【注⑧ 杏仁。アンズの核の中にある胚を乾燥したもの。薬用。】 【右丁下段】 【見出し】「むめかえ【源氏香の図】【見出し語の上部左右に飾り鉤かっこを付け、全体を▢で囲む】 此巻は詞をもつて名とする也。 源氏三十九歳の正月の事なり。 けんしの君たき物あはせ給ふことあり。是はあかし のうへの御はゝの御むすめとうぐうにまいり給ふよう いなり。せんさいゐんと申はあさがほの君也。けんしの 御心にしたがひ給はぬ心つよき御方也。此御かた を。ちりすきたる梅かえにゆいつけて。こんるり【紺瑠璃】のつぼに たき物いれて。五葉(こえう)の松の枝に白るりのつぼにも たき物いれて。梅をおもてにむすひつけたるあり さまことにやさしく見えたり〽花のかはちりにし 枝にとまらねとうつらん袖にあさくしまめや◯此心は 花のちり過たる枝には匂ひもとまるましけれとも。 そなたの御うつしあるへき袖にはあさくしむまし きと也。いまあはせてまいらせ給ふたきものは匂ひ なけれうつし給ふへき袖かくなるへしと。わか身を 卑下(ひけ)してよみ給へる也。けんしの御哥〽花のえに いとゞこゝろをしむるかな人のとがめんかをばつゝ めど◯此心はけんしにさいゐんへの心さしをはずい ぶん人めをつゝしむといへと。かくおもしろきたき 物の匂ひにつけて。我心はさいゐんにしむるとの心也 【左丁下段】  藤裏葉(ふぢのうらば) 春日(はるひ)さす  ふぢ    の うら  ばの うら  とけ    て 君(きみ)し  おも    はゞ われも  たのまん