翻刻
【右丁上段】
▲よめがはぎ なめすゝき【注①】 ▲生わらびのり
▲むめぼし のり いわたけ
▲とうふに玉子のきなる所を引あぶりてのりを入
▲あはびをせんにきり ▲白うを
のり入 なにゝても一しゆ
▲こゑび またゝびのくき
こゝりこんにやく【注②】
▲もゝげ ▲いかをさいのめにきり
みつばぜり のり入
▲山のいも あまのり くり
せうが
▲しゞみ ▲にし
くろまめ めうがの子
【見出し】◯さかな之部 《割書:魚鳥|しやうじん》【見出し語の上下左右の角に飾り鉤かっこ】
▲ふくるみをすりたししやうゆにて
ゆるめふにつけあぶり用ゆ
▲こんにやくをざつとあぶり大きくきりて
こせうのこをふるべし
▲いかでんがく
▲なすびこぐちぎりあふらにひたし
あぶりさんせうみそ
▲ちんび からかへ? あをのり
なるほどほそくはりのごとくにきり
にしめをきあはせ
▲たこ なるほどほそくきりゆのわかは
はりしやうがす
▲ばい うすくきりてゆのかはせんにきり
さけ す しやうゆ
▲かきかいのみをあぶりこせうのこをふりて
しやうゆにゆすを入
▲かはつきかまほこはむ【鱧】のかはをいたにして
みをよきほとにつけむしてつねのかまほこのことく
いた共にきりていだす
右料理こん立数種大がいかくのことし
【注① えのきだけの異名。】
【注② 凝り蒟蒻=こんにやくを煮て寒中に凍らせたもの。精進料理などに用いる。】
【右丁下段】
【見出し】まぼろし【源氏香の図】【見出し語上部左右の角に飾り鉤かっこを付け全体を▢で囲む】
此巻は歌をもつて名つけたる也。
源氏五十二歳の正月より十二
月なでを次第〳〵にしるしたり。源氏の紫(むらさき)の
うへを忘(わすれ)かたき心。月日にそへてたゝまなき心を
あらはせり。げんじの歌に〽おほそらに【「を」とあるところ】。かよふまぼ
ろしゆめにだに。見えこぬ玉のゆくゑたづねよ。
此心はげんじ空(そら)とぶ雁(かり)がねを見給ひて。かの唐(もろこし)の
げんそうくはうていの使(つかひ)にて。方士(はうし)がげんじゆつと
いふて。ひぎやうじさいをあらはして。こくうをも
かけり。ついにとこよの国ほうらいきうにいたりて。
やうきひのこんはくにあひたてまつりしこと
あれば。今とふかりもとこよにかへれば。はうしに
なぞらへて。大空(おほぞら)にかよふまぼろしのじゆつあらば。
せめてなき玉のゆくゑをたつねて。ゆめにだに
あひたきよしをつげよとなり。是はげんそうと
やうきひのことをしるしたる長恨歌(ちやうこんか)といふ文(ふみ)に
魂魄曽来夢不入(こんはくかつてきたつてゆめいたにいらす)【注③】といふ事あり。その心をよみ
給ふ也。此巻すべてむらさきのうへを恋給ふことを
書あらはしたり。げんじもこの思ひにてついに
かくれ給ふを。くもがくれといへり
【注③ 語順が違っている。正しくは「魂魄不曽来入夢(こんぱくかって来たりて夢に入らず)」】
【左丁上段】
【見出し】有馬湯(ありまゆ)の山 ̄の由来(ゆらい)【見出し語の上部左右の角に飾り鉤かっこを付け全体を▢で囲む】
▲攝州(せつしう)ありま山 温泉(うんせん)の旧窟(きうくつ)はそのかみ
人王(にんわう)三十五代 舒明天皇(ぢよめいてんわう)。三年秋九月に此
所に御幸(みゆき)なり給ふ。しかるに此 湯(ゆ)の涌(わき)おる所
岩をたゝみ草をむすびたる仙窟(せんくつ)なり。されば
其時 三(み)かの月(つき)湯(ゆ)つぼにさし入たるをゑいらん
まし〳〵て。是ぞ誠に人民(にんみん)の病苦(びやうく)を治(ぢ)する
温泉(うんせん)なるべしと思召かたじけなくも御製(ぎよせい)
◯三日月(みかつき)のしほ湯(ゆ)にうつる影(かげ)見れば
かた輪(わ)もなをる七日(なぬか)〳〵に
みか月は半月(はんげつ)にしてかたわのかたちなり
しかれ共七日〳〵十四日此湯にかげをさし
入て満月円成(まんげつえんじやう)の姿(すがた)になをるとの御心になん
▲同十年の冬(ふゆ)御幸(みゆき)まします◯又卅七代の聖主(せいしゆ)
孝徳(かうとく)天皇三年十月朔日に御幸(みゆき)まし〳〵て
武庫(むこ)のあんきうに還御(くはんぎよ)し給ふ。はじめは武庫(むご)と
いふ。今の兵庫(ひやうご)なり
▲人王四十五代 聖武(しやうむ)天皇の御宇(きよう)神亀(じんき)元年甲
子の年 行基菩薩(ぎやうぎほさつ)こやの里(さと)崑崙山(こんろんさん)金養寺(こんやうじ)に
【左丁下段】
匂宮(にほふみや)
おぼつ
かな
たれに
とはまし
いかに
して
はじ
めも
はて
も
しらぬ
わが身ぞ