翻刻
【右丁上段】
有
馬
冨士
ふもとの
きわは
う
み
にゝ
て
なみ
かと
きけ
は
お
の
の
まつ
かせ
【右丁下段】
【見出し】たけがは【源氏香の図】【見出し語の上部左右の角に飾り鉤かっこを付け全体を▢で囲む】
此巻は哥と詞とをもつて名と
する也かほるの大将十四はかり
と書て次(つぎ)のとしの正月より七月まで書て
又次の年のことあり。玉かづらの内侍(ないし)のかみの御はら。
をとこ”君みたり。女”君ふたりをはしける。ひげぐろ
うせ給ひてのち。心かけ給ふ人おほかりけるに。夕
霧(きり)の御子 蔵人(くらんど)の少将(せうしやう)ねんごろにきこえて。御はゝ
雲(くも)ゐのかりより文をまいらせらる。その比かほるは
十四五ばかりなるを。むこにと玉かづらはおぼしたり。
かほるの御かたちににる人なくをはしければ。御
はゝ玉かづらも姫”君にあはせばやとおぼしける也。
むめの花さかりに。かほるをはしけるあしたに
かほるのもとより玉かづらの姫”君のもとへ
〽竹”川の。はしうちいでし一ふしに。ふかき心のそこ
はしりきや◯此心は。はしは橋(はし)と端(はし)とをかねて
いへり。ことばのはしうちいでゝ。いひわたるふかきわが
心はしり給ふかとの心也。姫君かへし〽たけがは
に。よはふかさじといそぎしに。いかなるふしを
思ひをかまし◯此心はわが身を卑下(ひけ)してかこ
ちたる哥也。はやく御帰あるは御心とまるふしなきかと也
【左丁上段】
◯温泉(うんせん)湯治(たうぢ)養生之(やうじやうの)事
▲凡(をよそ)湯(ゆ)に入る次第は。先まくら湯にてう
がひをして。心経(しんぎやう)一くはん薬師(やくし)の名号(みやうがう)。くはん
をんのほうかう【宝号】をとなへ。其のち湯(ゆ)に入へし。
もしいそぐ事あらば。やくしのみやうがう
ばかりとなふべし
▲幾湯(いくゆ)諸国(しよこく)に有るといへども。或(あるひ)は水湯。又
は色々 味(あぢはひ)の湯なり。然るに此ありまはしほ
湯にて。力(ちから)はげしみ。ゆへすくなくよくすれ
ばかんを暖(あたゝ)め。しつをさり。風をしりぞけ。
けつけいをたゞし。気(き)りよくをます。腫痛(はれいたみ)の
所を治(ぢす)る事。此湯のとくにこへたるはなし。
しかしながら。くすりなればとて。つよく
よくすれば。汗(あせ)しきりに出て。けつけい
ちがひ胸(むね)ふさがり。心とろけ。きりよく尽(つき)
て。たちまちにあやまち有。たとへば酒はもろ
〳〵の薬なれども。過(すぐ)るによりて毒(どく)と成。
塩はあぢはひの主(ぬし)なれども。すぐればあぢ
をうしなふがごとし
▲大かた養生(やうじやう)に入ひとは。一日に二度ばかり
【左丁下段】
橋姫(はしひめ)
はし
ひめ
の
心を
くみ
て
たかせ
さす
さほの
し
つく
に
袖(そで)ぞ
ぬれぬる