翻刻
【右丁上段】
▲赤(しやく)日 赤口神(しやくこうじん)とて一さいべんぜつをもつ
てつとむる事にさゝはりある日なり
▲往亡(わうもう)日 かど出お舟なとにいむ此外もよろしからず
▲くゑ日 大あく日此日何事にても末とげ
ず。ことに死人をとふらはず凶会(くゑ)日と書也悪日也
▲きこ日 出行わたまし祝言(しうげん)入部(にうぶ)【注①】げんぶく
其外よろづ何事にもわろし
▲けこ日 きうはりにいむ日なり惣して
ものゝ血(ち)を出すものころす事なかれ
▲かん日 きうはりにいむ身のあかをおと
さず。いしやうのたぐひあらはぬなり
▲十し【注②】 大あく日也よろつにわろし
▲冬至(とうじ) とは陽気(やうき)地の下にはじめてきたる
日なり。此日までにて日りん南へ行あたり
給ひ扨北へ行と云ことによつて用事により忌
▲天火日地火日 大あく日也やねふきむね
あげかうさく家づくり。だうとう宮やしろ
こんりうなどにいむ日也としるべし
◯人の魂(たましゐ)のかずをしる哥
▲木(き)九からに火(ひ)三ツの山に土一ツ
七ツ金(かね)てそ五 水(すい)りやうあれ
【注① 領内にはいること。特に、国司や領主などがはじめて任国にはいること】
【注② 「十死日」の略。】
【右丁下段】
【見出し】てならひ【源氏香の図】【見出し語の上部左右の角に飾り鉤かっこを付け全体を▢で囲む】
此巻は詞をもつて名つけたるなり。
かほる廿六七歳のことをしるす。さて
うき舟は小野のあまのもとにて手習(てならひ)をしてつく〴〵と思ひ出
給へば。物思ひなげきて。みな人ねたるまにつま戸をひらき出たり。河
風はげしく川 波(なみ)あらく。ひとり物をそろしく居たりしを。きよげ
なるおとこきていごくを。兵部卿の宮と思ひしに。心まどひしらぬ
所にすておきて此おとこきえうせぬ。そのゝちのことはおぼへ給はす。
小野のあまにつれられて小野に居給ふことは。小野にあまありし。
此あまはつせへまいりて下向(げかう)に宇治(うぢ)にやどりけり。家(いへ)のうしろ
木のもとに。うき舟のすてられてなき居たるをつれてうちへ
いれてけり。此あまはつせにてゆめのつげありけるとて。此
ひとをいたはりぬ。あまのあにたうときひじりなりけるに。
いのりかぢさせて小野つれゆかれ給ふ。此あまのむすめ有
けるが。はかなくなりしに。むこの少将といふ人のうき舟の
君に心をかけゝれば。むつかし思ひてあまのるすにひしりを
たのみてかみをおろし給ふ也。うき舟の哥に〽身をなけ
し。なみだの河のはやきせに。しがらみかけてたれかとゞ
めし◯此心はわが身のうきまゝに身をなげたるよと
思ひしが。かやうにいきてある也。しかればたれかしからみと
なりてわれをとゞめけるぞとのこゝろなり
【左丁上段】
【見出し】不成就日之(ふじやうじゆにちの)事【見出し語の上部さゆうの角に飾り鉤かっこを付け全体を▢で囲む】
正七月 《割書:三日| 十一日》《割書:十九日| 廿七日》
二八月 《割書:二日| 十日》《割書:十八日| 廿六日》
三九月 《割書:朔日| 九日》《割書:十七日| 廿五日》
四十月 《割書:四日| 十二日》《割書:廿日| 廿八日》
五十一月 《割書:五日| 十三日》《割書:廿一日| 廿九日》
六十二月 《割書:六日| 十四日》《割書:廿二日| 三十日》
右の日物を仕(し)そむるにも人にものをいひかけ
ても成就(じやうじゆ)せず何事にも此日つかふべからず
◯同 悪(わろ)き日をしる事
【横並びの日付の上を円弧で繋ぐ】
毎月 《割書:四日|十一日》 《割書:十八|廿五日》
此日くれ六ツより夜の九ツまで
毎月 《割書:八日|十五日》 《割書:廿二日|廿九日》
此日朝六ツより暮の九ツまで
右ふじやう日也物しそむる事人に物いひ
かくる事何事もとゝなはぬとしるべし
【左丁下段】
夢浮橋(ゆめのうきはし)
のりの
しと
たづ
ぬる
みちを
しるべ
にて
思はぬ
山に
ふみまどふ
かな