翻刻
【右丁上部】
【右丁上部・冕】
冕(へん)たまのかむり
天子
の
冠(かふり)
也
【右丁上部・唐冠】
唐(から)冠(かむり・くわん) は貫(くはん)也 髪(かみ) を貫(つらぬき)つゝむ也
冠(かんふり)
首(かしら)
に有
ゆへ
元(けん)にしたがふ
法制(ほうせい)
有故
寸に
したがふ
【右丁上部・幞】
幞(ぼく)は しうの武帝(ぶてい)の
つくり
はゞめ給ふ
唐
人
の
かむり也 幅巾(ひとはゞのぬの)を
裁(さい)して四 脚(あし)をいだす
幞頭(ほくづ)
【右丁下部】
源氏物語《割書:一部|大意》【この見出し語を角丸▢で囲む】
そも〳〵此げんじ物かたりは。わか国の
至宝(しいほう)。【注①】花鳥(くはてう)の情(なさけ)をおもてとし
好色妖艶(こうしよくようえん)をもつて書あらはすとはいへども本意(ほんい)は人をして
仁義(じんぎ)五常(こしやう)の道(みち)【注②】に引いれ。終(つい)に中道(ちうだう)実相(じつそう)をさとし。
人間(にんげん)かりの色(いろ)のはかなきことをしめすに。生老病死(しやうらうびやうし)。
盛者必衰(しやうじやひつすい)。有為転変(うゐてんべん)。常住壊空(じやうぢうゑくう)の法文(ほうもん)をたて。出世(しゆつせ)
の善根(ぜんこん)を成(しやう)せしめんとす。それ人のはしめは。陰陽(いんやう)男女
のなからひなれば先(まづ)男女(なんによ)のよしあしを書あらはして
人をよきにしたがひあしきをされば常(つね)の道(みち)たゞしく
をのづから道にたかふべからずもろこしの書(ふみ)に見えたる
関雎(くはんしよ)の詩(し)は后妃(こうひ)の徳(とく)君子(くんし)のまじはりをしるせる其外
好色 淫風(いんふう)のみだれたるもあれどついに思(おもひ)無邪(よこしまなし)といふ人
の情(こゝろ)の正(たゞ)しきにいれりもとよりわか国のをしへはやは
らかにしておもてを詞(ことは)の花にめでしめうちにはまことの
ことはりをさとらしむるはかくれたるよりあらはるゝはなし
といへる中庸(ちうよう)の道(みち)にかはらざるをや。いはんや天台(てんだい)の六十
巻になぞらへ巻の数(かず)六十 帖(てう)。その内の天台(てんだい)三 段(だん)かけたる
心をもちて。五十四 帖(でう)につゞめ紙数(かみかず)も三 千枚(せんまい)といへるは。一 念(ねん)
三千の義(ぎ)なるへし。かゝるたうとき物かたり心をつけてみるへし
【注① 「しほう(至宝)の慣用読み】
【注② 儒教で、人が常に行うべき五種の正しい道をいう。通例、仁・義・礼・智・信をさす。】
【左丁上部・袞】
袞(こん)
天子の御いしやうなり
【左丁上部・裾】
裾(きよ)はいしやうの跡に
さがるもの也
俗に とびの 尾(お)といふ
【左丁上部・奴袴】
奴袴(ぬこ)はかりばかま【狩袴】
さし
ぬき
の袴(はかま)
なり
大内女
中のきるは色
あかき也【女中の着る色は赤】
【左丁下部 挿絵 文字無し】