← 前のページ
ページ 110 / 1317
次のページ →
翻刻
ゐて経をよみ呪(しゆ)をみてゝ日を送り給ひけるに陰雲(いんうん)
靉靆雨滂沱庵室(あいたいしあめはうだたりあんじつ)のうち河流(かりう)のごとくして身をゐるべき
所なしわづかに岩の上に蹲居(うづくまり)して存命ほとんとあぶな
かりけり高声(かうせう)に経をよみ奉る我(ワレ)不(ズ)_レ愛(アイセ)【訓点二】身命(シンメウ)_一但(タダ)惜(ヲシム)_二無(ム)
上道(シヤウドウヲ)【訓点一】の義なり夜ふけて夢ともなくうつゝともなく容(よう)
貌美麗(ほうひれい)なる総角(あげまき)の幼童(わらは)左右におの〳〵壱人僧正のあ
しをさゝけたりおどろきて幼童(ようどう)をもとむるにはじめて
夢としりて感涙(かんるい)をさへがたしいよ〳〵本尊を念じてねぶれ
ばまたさきのことく童子見へけり麗景殿(れいけいでん)の女御僧正を
御猶子(ごゆうし)にして憐憫(れんみん)の心ざし実子に過たりけり
【柱】古今巻二 〇二十二