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【692】東大寺の上人/春豪房(しゆんかうばう)伊勢海(いせのうみ)いちしのうらにて海(あま)人
はまぐりを取けるを見給ひてあはれみをなしてみな
買(かい)とりて海(うみ)にいれられにけりゆゝしき功徳(くどく)つくりぬと
おもひてふし給ひたる夜の夢にはまぐりおほくあつ
まりてうれへていふやうわれ畜生(ちくしやう)の身をうけて出離(しゆつり)
の期(ご)をしらずたま〳〵二ノ宮の御ぜんにまいりてすでに
得脱(とくだつ)すべかりつるを上人よしなきあはみをなし給ひ
て又/重苦(ぢうく)の身と成て出離(しゆつり)の縁(えん)をうしなひ侍りぬる
かなしきかなや〳〵といふと見て夢さめにけり上人
啼位(ていきう)【「位」は書陵部本「泣」】し給ことかぎりなかりけり
【上欄書入れ】19
【柱】古今巻二十 〇十五