← 前のページ
ページ 49 / 1317
次のページ →
翻刻
通夜(つや)したりける夢に御殿(こてん)の御戸(みと)ををし開かせ給ひて
誠(まこと)にたけき御こゑにて武内(たけうち)とめしければ畏(かしこまつ)て参(まいら)せ給
御ていを見奉れば高年白髪(かうねんはくはつ)の俗形(ぞくきやう)まします御/装束(せうぞく)は
分明(ふんめう)ならず御/前(まへ)に畏(かしこまり)てさふらひ給ひ御ひげ白(しろ)く永(なかく)し
て御/居(い)だけとひとしかりけり又/御殿(ごてん)の内よりもさき
の御こゑにて世中みだれなんとすしばらく時政(ときまさ)が子(こ)に
なりて世(よ)を治(おさむ)へしと仰出されけば〻〻唯称(せうい)【他本「称唯」】して
おはしますと思ふほとに夢(ゆめ)さめにけり此事を思ふにされば
義時(よしとき)朝臣は彼御後身(かのごこうしん)にやその子泰時(こやすとき)までもたゝ
人にはあらざりけり
【柱】古今巻一 〇二十二