← 前のページ
ページ 529 / 1317
次のページ →
翻刻
【柱】古今巻八 〇十一
すべて物をもだにいはず目をも見合ず打そばむき
てあればしばしは何事の出きたるぞやと心もえず
思ひゐたるにしだいにいとひまさりてかたはらいたき程也
さき〳〵の様に一処にも居ず方(かた)をかへて住侍けり
ある日形部【刑部】卿出仕して夜に入て帰りたりけるに出居
に火をだにもともさず装束(さうぞく)はぬぎたれ共たゝむ人
もなかりけり女房共もみな御前のまひきに随(したかい)ひて
さし出る人もなかりければせんかたなくて車よせの妻(つま)
戸をおしあけて独(ひとり)ながめ居たるに更闌(こうたけ)夜しづかに
て月のひかり風の音物ごとに身にしみわたりて人の