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翻刻
【柱】古今巻二 〇三
おはします堂前(だうせん)にひとつの霊石(れいせき)ありむかし行者/孔雀(くじやく)明
王の法を勤修(ごんしゆ)の時/一言主(ひとことぬしの)明神きたりて此/石(いし)に座(さ)し給へり
天/武(む)天皇の御宇/白鳳(はくほう)十四年に高麗国(かうらいこく)の惠観(ゑくはん)僧正を
導師(どうし)として供養(くやう)をとげらる其日/天衆降臨(てんしゆこうりん)しさま〴〵
の瑞相(ずいさう)あり行者/金峯山(きんぶせん)より法会(ほうゑ)の場(ば)に来りて私領(しりやう)の
山林田畠(さんりんたはた)等数百町を施入(せにう)せられけり曼荼羅(まんだら)の出現(しゆつげん)は
当時建立(たうじこんりう)の後百五十二年をへて大炊(おゝゐ)天皇の御時/横佩(よこはぎの)
大臣《割書:藤原|伊胤》といふ賢智臣(けんちのしん)侍りけりかの大臣に鐘(しやう)【他本「鍾」】愛(あい)の女(むすめ)
あり其/性(むまれつき)いさぎよくしてひとへに人間の栄耀(えいよう)をかろしめて
たゞ山林幽閑をしのびつゐに当寺の蘭若(れんにや)【「若にや」のルビ、濁点付の「に」】をしめて弥陀(みだ)