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翻刻
ける間紀伊国/完背(しゝかせ)山【宍背山ヵ】にいたりて宿したりける夜
其人は見へずして法花経をよむ声聞えけり一/部(ぶ)
読終(よみをは)りて経の声やみぬあやしく思て朝(あした)に其
程を見るに年/序(じよ)へたる白骨(はくこつ)あり更(さら)に分散(ぶんさん)せず
して正/体(たひ)みなつゞきたりその髑髏(どくろ)の中に赤(あか)き
舌(した)あり壱睿(いちえん)髑髏(どくろ)に向て其/因縁(ゐんえん)を問ければ
舌(した)こたへていはく我はこれ叡山(えいざん)の僧名をば圓善(ゑんぜん)と
いひき修行の間此山に至(いた)りて文亡(ようばう)【夭亡ヵ】す前生に
法花経六万部を読(よみ)奉らんと願(ぐはん)をおこして生(せう)
分(ふん)はすでにをはりにたりはからざるに生をへだつ
【上欄書入れ】5
【柱】古今巻十五 〇四