翻刻
【右帖】
付る時はよわき蚕つよ蚕に押かすめられ喰お
とるもの也それより段々喰おとり上り前には日数
一日程違たる蚕有もの也尤せめ桑あたゆるといへ共
其間に繭作る蚕有然る時は上てみれ見れはひきり
過たるに若きにありてまゆそろわす石取思ひの外
ふそく【不足】なるもの也又格別うすく休て桑付時は有
のままに桑を喰てくいおとりなしそれにてさへ上り前に
は一食違の蚕有もの也爰こそせめ桑あれいま
た桑喰きらさるに一葉ならへに二度も三度もあ
たへ籠の内残らす老蚕と見へし時桑共に取て
【左帖】
まふしへやとひ作らせて見るに繭大きく厚く
石とり思ひの外に有もの也さるによつて上り籠一籠半
を庭一かこつもりに休るを念者の上詰とする也
ある人不審して云人間の躰は風湿寒暑にあたれは
諸の病出るといへ共風湿寒暑にあたる事常の事也
されとも病出る事稀也又蚕も人間に替る事なし
といへとも風湿寒暑に少もあたれは諸の煩になると
云は心得かたき事也此儀如何答て云蚕と人間は
天性格別也先人間の身は風湿寒暑にあたる事
内外常の事也されとも気血に順不順あり不順な
る所へつよき風湿寒暑にあたりてこそ病出へ