翻刻
【右帖】
けれ順なる所へあたりては病出さると云り誠に不順な
る時も其つゝしみある故に病出る事まれ也蚕は
家内に居する虫なれは身に応したる風湿寒暑は
常に【耳=に】家内にあり其上蚕には衣服なし結句四度の
休には己か生れたるきぬをぬき素肌(すはた)なる故に常
より外のつよき風湿寒暑にあたる時は諸の煩出る也
故につよき風湿寒暑にには少もあてさるもの也又云儒仏
神の三教共に過不及をは嫌ゐふ所に蚕に桑過分に
せめあたふ事更に以合点しかたし是如何答て言蚕は
桑過分にあたふるを以中とす如何そなれは相応にあた
【左帖】
へては筋骨を喰蚕せいそたゝす繭もちいさく糸に
すれはふし出る也【節出る也】又桑たくさんにあたへて筋骨
を喰せさる時は蚕ぜいゆたかにそたちまゆ大きくあつく
糸にふしも出さるもの也故に桑過分にあたふる也扨又
まふしは様〳〵有といへ共いにしへゟ常法の萱まふし
か尤也やといたるまふしへは風をいむべし上て三日めに
はまふしへ響(ひゞく)やうに籠ふちを銘々にたゝくへし
子たゝきといふは是也蚕も能程に繭を作り休み
又作くらんとするにせいふん尽て眠て居也然所に
こたゝきをせられやれと思ひ又作るゆへ内きぬしめなと
言り是太子本紀に見へたり扨又種を出さは上けて