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コレクション: 養蚕の書

蚕養育手鑑 - 翻刻

蚕養育手鑑 - ページ 15

ページ: 15

翻刻

【右帖】 六月目には急きかき取て風湿寒暑をしきりにいとひ 蛭(ひる)出て種を生するにいにしへは桑の葉をほして 紙の下にしき其うへにて生せける事蚕は桑の葉を 食とす蛭は桑の香を食とする故也然時は桑ゟ外し 一切のかほりをいむへし誠にたはこは禁物也扨種は有へき 様にうませて其蛭屋敷内戌亥の方に桑を植其 下に穴をほり中に柵([ま]かき)の棚(たな)をゆい上を蓋(をゝつ)てそれへ 捨置へし生とし生るもの皆是天命をうくる也 中にしたる棚は小児の除(よけ)又蟻の難を除ため也上を おほふは諸鳥の除也天性の儘おのつから滅る時は 【左帖】 立寄て恩徳の念佛を廻向して下の穴へ葬へし 扨又蚕神の祭礼はあま酒を作りて祭へし是聖 徳太子の御教也誠に蚕は名虫也過現未の三世を あらはあらはし蛭となりて漸愛欲の思ひをなし陰陽(めを)の 契(ちきり)をなす事半日にたらすといへ共人間のために翌年 の種を残す是天のあたゆる契なるへし頗(すこふる)蚕の時ゟ も人是をいたはりて諸の補をする事天より補瀉温 凉の妙葉をあたふるがごとし養育の次第は父母の 赤子を養に似たり居所を度〳〵作り替て身を休ん するは孝なる人の親の床をあらたむるかことし蛭 となりても人に手なるゝ事父母の《振り仮名:膚を|はたへを》赤子