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コレクション: 養蚕の書

蚕養育手鑑 - 翻刻

蚕養育手鑑 - ページ 21

ページ: 21

翻刻

【右帖】 もとし此理をよく〳〵得心する時は渡世第 一の益なるへし 物語に云二十年以前天和年来の比なるに当国碓 氷郡に賢者ありいとけなき時父におくれ母はかり 持て孝をつくさはやと思へ共まつしけれは力およ ばす時々の疏食(そしき)も養かぬる躰にて是を常にか なしみ妻子共に飢寒のくるしみをして明し暮し けり此人思ふやう蚕は国の宝也是を養育する 理を覚て孝養の種にせはやと思ひそれより 蚕に心を尽しわつか畑弐反はかりの桑を以て 【左帖】 蚕を養けりもとよりかしこき人なれは蚕徳 失の評判を聞てさま〳〵のためしをわつか五 六ケ年の内に養育の理をゑとくすそれより養屋 作り冬春の内爰かしこにて桑を買置夏の手間を 頼置く買桑頼手間にて蚕過分に養其利を 得事人に【耳=に】勝り段々田畑買ふやし次第〳〵に 富貴となるもとより親には孝養を尽くし夫婦 の中むつましく子共には仁慈ふかく芸能を仕付 兄弟の道たゝしく朋友の交にも誠有故に諸人此 人をうやまひ用を遍する事飛行也さる程に養蚕の 理を得とくして廿ケ年たゝさるうち籠数五六百枚養