翻刻
【右帖】
に入ては悪し内へぬくみ通らさる也猶も寒風はけしくは
紙ちやう【紙帳】つりて内へ入置夜は中に寝て昼夜炭の火
を起し随分暖かにすへしはくへきと思ふ日は早朝
より戸しやうしをさし焼火を沢山して外は寒風
しくとも【烈くとも?】家の内はあたゝかなる心地よし紙帳の内はけし
すみの火にて人ははたの心地にして新き畳の上に継紙
を敷て九ツ時種をひろけはく先立て桑のめをもとめ
もみかけ暫く置てそろ〳〵とはきおろすへしはき
おろしをは随分うすくして桑のめよく〳〵もみひしき
水出る程にして茎を残らす取捨蚕一疋に桑のめ
二三粒つもりにあたへ太子御教のことくいしみを作りて
入るゝかさなくは横広のうつわものにぬかをしき
【左帖】
それへ入て其夜は衣類を以よく〳〵包下にはふとんの
たくいを敷置へし弥々紙帳の内に寝て炭の火たへ
さるやうにおこすへし惣してしみは夜明前ゟ日出時分
迠つよきものなれは其間をよく〳〵補へしたね慥
にてしゝ竹にほそ蚕有事はきおろし夜寒して
桑のめくいかねたる蚕又桑のめもめすして喰かね
たる蚕になると見へたり此故に桑のめ至極もみ
ひしきてあたへ器物に入て包あたゝむるもの也翌日も
寒風あらば前のことく家内も紙帳の内も暖にして
九ツ時分は前日はきたる蚕を取出し手はたへうつし
随分うすくひろけて桑のめあたへへし八ツ過にはまた
残りをはきて右のことくうつは物に入置右ともに其
夜も包みあたゝむへし三日めにも寒風あらば