翻刻
【右帖】
蚕うらを立るもの也是は湿をのそく術也若油断して
蚕裏かひたる時は皆減る也たとひかひすとも【かびずとも】しめりて
少も湿にあたる時は蚕性あくなりて段々にへるもの也
休前休の内寒風強くは家内紙帳の内共にあたたかに
補随分にうすくして桑うすく度々せめあたへ一日一夜の
内に休付やうにすへしたとひ休付ははやく共おそく共
半分おき時分見合て中桑うすくあたへへし其後
不_レ起蚕とほく有内にやわらかなる桑を以見合て
早々桑付へしそれより二喰はかりはつみくわあたへへし
此度もやわらか成桑をゑらふへし扨又はき立より
二階にて養人有尤自【おのずから】寒を凌家有物也さなき家
にてはあやうし夜明前至てしみ強き事有しゝ
【左帖】
竹の休前休の時分にあたりなは蚕の煩たるへしさ様成
時は下にて焼火をすへし又休みにいきれ有時は戸 障(しやう)子を
明てすゝしくすへし誠に蚕に不順成年のしゝ前のこゝろ
尽し上てかそへかたし然共何分に心を尽すとても蚕出
て竹休み迄は廿日斗の間成へし殊に教のことく養育
補をする時は其辛労むなしからすやかて舟時分は徳
あらはるゝもの也
物語言十七年以前元禄年来子の年に桑はき立時分
より竹おき時分迠毎日〳〵寒風はけしくて有時は
雪霰なと降りて暖風成日一日もなしさるによつて蚕
悉 払底(ふつてい)になり世間蚕三分くらいにて桑も直段
なく末には大かた切ほしけり然る所に有村に蚕鍛錬(たんれん)