翻刻
【右帖】
の人有てかねて拵置けるにや四畳づりの紙帳をつり
内にわくたなを立てさし置炭の火を以補けり夜は
うちに寝て夜半分はみつからすみを継(つき)半夜は妻
につかせける昼は時々外のたなへ上置煙たゝさる薪
をたきて蚕うらをかわかし桑を自身つみてやわ
らか成桑はかり竹置迠あたへ廿日程か間昼夜こん
を尽しけるさるによつて舟時分は蚕こと〳〵く繁昌
し殊に直段は高く舟蚕を大分はなしけり其上養に
も毎年より余慶有て人々の余り桑をもらいくれて
上けれは前後稀成上繭を作り思の外石取出し右舟蚕
の代ともには二年あたへ取たり此人常々蚕に心をつ
くし養育の理をおほへて昼夜二十日徳心をつく
【左帖】
せしゆへの徳也
第七竹休の事
歌に
竹やすみ風湿寒を能いというすくひろけて桑をかさねよ
しゝよりおきて二日程過は蚕うらを立てわけ出し大籠な
らは紙帳の内に大わくたなを立てさし置【注1】長閑なる時は
まくりあけて風を入下棚の籠をは外の棚へ上て蚕
うらをかわかすへし【ここまで】寒風有ときは紙帳をおろし置夜明
〳〵にはすみの火をおこ【注2】すへし随分うすくして桑う
すく度々あたへへし扨【ここまで】又舟休みは四度の内にて蚕の大
難也竹前より桑沢山にせめ付て休る時には蚕性だゝ
しく成て舟にも不_レ備滞理あり又蚕を急せる事切り
桑の内斗也弥弥休前には家内を温かにして桑度々
【注1と注2の部分は群馬県立図書館の資料にはなく、書き間違いでもなさそうなので別に底本があると思われます。https://www1.library.pref.gunma.jp/winj/archive/jpeg/1100232471/020.jpg 】