翻刻
【右帖】
二階へ上てもくるしからすわけたる即時は桑うすく度々
あたへへし若長雨ふらば南風の除内外にして火を強く
たき蚕棚の際(きは)には炭の火をおこし家内を暖にすへし若
此時南風にあたり寒きめをしてそたちかぬれは蚕性悪く
成て不休もの也随分此所を油断なく補へし休前には
いよ〳〵家の内を暖かにして桑うすく度々せめ付夜桑
をもあたへて一旦に休めへし一ツ休と見へし時はたとひ雨
やみたり共蚕うらをめい〳〵切てかわかすへし休の内も
雨やますして湿気つよくは筵(むしろ)はたへ篠を通しすくひ
上てふたづかせ風を入へしさもなくては下に休たる蚕
湿にあたりて末には滅るもの也是は庭休も同断若休前
暖なる時は桑の度数をかそへすいく度もせめ付て夜桑
【左帖】
をもあたへ一日一夜には是非共に休付やうにすへしそれにても
休みかねは葉桑を付て取外の籠にて休めへしいつれも桑
をとめて一食程間を置起たる蚕一疋もなき内にうき
をまひき起と早速桑付へし右たね慥にて養育
補たるする時はうきに成へき蚕なき筈なれ共長く休
れは性悪く成て蚕長つゝまるもの也さる程にうきを
早く間引きうき捨へからす外の籠にて休めへし惣して
蚕のおきはたくりくには右禁物の匂皆〳〵いむへし若人馬の
ふんなとゆるがきて不_レ叶事あらば休起の間に桃の葉
をあふりて蚕の籠にさし置其匂有内にゆるかすへし
自然休前の内以の外なるわるいきれあらは家の内にて
火を焼へからす戸障子をはつし風を入へし若おき
はたにもわるいきれあらはは半分おき成共中桑にうすく
あたへへし其後おきたる蚕少々有共見合て早桑