翻刻
【右帖】
繁昌して纔(はすか)六七十軒有村へ隣村の桑五百駄程
買こむ近村の人々云るは是程皆切ほす中に他村の
桑大分買こむはよく〳〵の仕合也とて皆人是をうらやみけり
誠に是は合壁の人々心を付て其人の養育の術
をまなびそれより村中へいひつたへ皆〳〵養育の理を
心得たる故の徳也
第九庭休の事
哥に
〽庭休み風湿のそけうすくせよ桑をたやさで暑気におとろけ
舟ゟ起て二日めには早く蚕うらを立てわけ出すへし此時にも
永雨ふりてさむくは右舟のことく焼火をすへし桑は前かたに
はやし置ほこりせさる所にませをゆひそれへ立かけて
露を落すへし又大分いきれる時は家の内にて火をたかて【火を焚かで】
【左帖】
桑をたやさすあたへへしおもいきれ甚敷は戸障子をはつして
風を入へし扨又休は四度ともにうすきかよしといへとも
就_レ 中庭の休はそろへ仕舞なる故各別うすくするも也
頗(すこふる)蚕には大小あり大図中を取ていふ時には壱尺四寸之内
百四拾疋より百五十疋くらい迠休めて中分と見へたり
前度竹舟の休には数多き故寸方かすを出しても養人
かすとめかたし大図是にて斗知べし舟のあつ蚕六折かへしと言
竹十と言り是を斗合て見る時は古よりしゞ竹まで随分
うすく養来れり又庭の休格別うすくする事六十年
以前念者の初めたる事也扨又此休にも北風強く吹て寒
する事有蚕生長したるとて油断すへからす北をとちふさき
焼火をして家内を暖にすへし休前には辺間の風
をもいとひ桑四度も五度もせめくわせ今少とゆふ時