翻刻
【右帖】
いとひ家内を暖にすへし若寒くして桑喰かぬれ
は日数にて蚕性つつまるもの也兎角蚕の石取は蚕
せいゆたかにそたゝされは十分にはあらす扨又わけて二
日め自分より蚕厚くなる故に桑あつくあたゆれは
むらくれしれす然る時は桑うすき所の蚕はやく喰切
脇へ及といへとも有桑へは余の蚕とも喰付て居る故に
喰事不_レ叶其間に喰おとる也さる程に朝桑あたへ
なはいまた桑の有内に籠をおろし手こゝりをほとして
なき所へは外の桑をあたへ銘々直すへし昼桑も右
の通夕桑は弥以念を入朝迠残やう再(さい)喰をすへし
日夜に桑を増てあたへ桑筋くわせさるやうにすへし
【左帖】
桑筋を喰すれは蚕性つまるもの也又ひきりへかゝ
りては桑くいおそし其時は未桑の有内にうすく
ならへてあたへ又有内にはならへ幾度もせめ付て
籠の内不残老蚕と見へし時桑ともに取てまふし
へやとひ扨又上る時分昼の八ツより半時分迠夜の
五ツより五ツ半自分迄以の外成わるいきれ有事有夜の
いきれは火をしめし戸障子を明て置は凌くもの也
昼のいきれは凌きかたく口にあたる桑なけれは其儘むり
ひきりにひきる事有左様成いきれは十年に一度有か
なきかの事也され共心付てさもあらん時は火をしめしゆ
たんなく桑をせめ付け戸障子をはつし風を入へし
雖(いゑとも)_レ然(しかり)屋敷家によりて大かたはしのきかぬるもの也