翻刻
【右帖】
哥に
まぶしをはこゝりをわけて重らせてやとひはうすく風をいむへし
まふしはさま〳〵有といへとも蚕沢山にて念を入る手廻し
には萱まふしが能もの也春の内ひ《見せ消ち:ゆん|よう》よき萱を
長八寸か九寸迠の内に萱筋をたゝしてもちれ
さるやうに【もぢれざるやうに】折置へし若俄かにおらは折めをよく打ひ
しきのひさるやうに横へ引くつろけてこゞりをわけ
かやの折目は十本を十所に置てまふしの上は五寸共
明所なきやうに立へし扨又やとひはさま〳〵有さらい
やとひにすくいやとひ蚕の上へ押立やとひ山方にては
ほやを以舟やとひ上州の内にても日野は古例のひろひ
やとひ下野【栃木県の旧国名】の内ゆふきは老蚕(ずう)のつりやとひ此外国々
【左帖】
にてあらゆるやとひ有といへ共繭十分に作らせんとするには
桑度々せめ付て桑共にさらいやとひか尤と覚たり
若わかき蚕あれは其桑を喰ふ也喰残は早速枯て
まゆのやらいにならす又世の中にて打桑といふ事
有桑共にやとふ時は是打桑の心也右の通上り
前には桑度々せめ付て不残老蚕と見へし時桑
共にさらい取てまふしの上の平になるやうにうす
くやとふへし家とひ出しは二分も三分もないし五割
も見合てかつかう次第に出すへし兎角うすやとひ
にしくはなしやとひたるまふしをは二階の内下にては
二階きわ惣して高き所に上置へし若無攄て
手近くに上ケ置は風とあかりのよけをすへし右のことく