翻刻
【右帖】
まふしとやとひに念を入る時は繭作る場所おほく有
て早速作る故にまゆ大きく衣あつく形もすく
れて能もの也大并のやとひを見るにまふしも
大手にそさうに打立てひろけもせすにやとふ也
然る時はまゆ作る場所すくなくて尋まわる内に
せい分尽て繭ちいさく衣うすく重作りにつく
る故はまゆも多く形悪し又まふしひろから
さる所へ蚕の小便多くかゝり萱しめりていきれ
まゆ多しかき取て見る時には石取思の外不足
なるもの也それのみならすまゆにて売は下直なり
糸にすれはたゝさるまゆ多しもとより衣うすき
【左帖】
まゆなれは糸目も格別不足にて大分なる損と
見へたり又念者の念に念を入詰めてうすやらひに
したる繭と格別無念者のそさう【粗相】したるまゆをく
らふれは一倍余も違也又同し様に養なして
も家とひの段にて三割五割の違は有もの也此損
徳をしるへきには念者の養おろしたる上まゆ
壱升の蚕の数と又無念者の養おろしたる
下まゆ壱升の蚕の数をとめて蚕の多少上繭
下まゆ損得を壱升の内にて能々ためし我
養へき分料へかけて其損徳を知べし然時は
損徳の證拠しれ念を入やすきもの也