翻刻
【右帖】
哥に
〽そろばんは応する数の證攄にて合点すれは疑(うたかい)もなし
扨また蚕の上る時分よりまゆかき取時分迠も
南風つよく入て永雨降る事有其時は内外に
風除をつり大戸口には暖簾(のれん)をさけて随分
風をふせき又臺所にても居間にても小座の
間にても焼火をたやさすして繭作る内は家内
を暖にすへし此時薪は何程たくとしてもまふし
一籠か二籠の実なるへし若此時焼火もせす
南風にあわせまゆ半作なきもの也養詰て
の損得此時分なりよく〳〵前方より心付へし
【左帖】
物語云廿九年以前貞享年来子の年庭蚕
の時分よりまゆかき取時分迠南風しきりに
吹て長雨ふりけりさるにより半分はむた蚕に成て
はまゆ多く繭散々也餘国はしらす凡上州には
手にかゝるまゆ更になし雖_レ然【しかりといへども】爰に蚕しゆれんの
人有てさもあらん事を兼て心得大戸には三
尺の半戸を仕付置けるがはつし取障子をさし
其外さま〳〵の術を以風をは随分防けり火をた
かはやと思へ共薪なし長雨の事なれは力不及あ
きれて居たりしが折節其春古家のはりさすなとを
調置ける先此時の用にたてんとて是を打わり〳〵
大戸きわ下のいろり居間のいろり又小座の間に