翻刻
【右帖】
ては置いろり以上四所にて蚕上初るより七八日か間
取くべ〳〵焼けれはむた蚕一圓なくまゆは日より【日和=天気】
能時上たるに少もかわらす上繭也是は当国のまれ
もの成へしと見る人ことに誉くれ【誉られ】ける世なみの
繭と其人のまゆの損徳を考て見れは右はり
さすの代十双倍よりも猶つよし是養育の理を
知て陽気に心を付たる故の徳也
哥に
〽しおふせて見れは心も落つきぬあやうき物は蚕也けり
扨又繭はかきしゆんさげては大きに悪しまふし蚕の小便
にてしめり永く置は中にていきれる也四日め時分
よりかき取て五日六日め時分に早々干べし
【左帖】
寒き自分に上たるをは五日六日め自分よりかき取へし
扨又まゆ干時分長雨ふりてほしかぬる事は
仕やう有といへともつりかへる義ある故に書印す事
あたはす若又種を出さは六日めよりかき取てそれゟ
十日程風湿寒暑をしきりにいとふへし暑気甚く
は北風は苦しからす種出し付さ人むさと出すへ
からす養育おろそかにして翌年の蚕あや
うし出し付てたる人には術有といへ共委記不及
已心伝心の功を出すへし欲にはなれて随分吟
味をとけへし飢桑若滞の類をは堅く出す
へからす有所に少々の福者ありまれに蚕をあてぬ