翻刻
【右帖】
れとも折節永雨ふりて蛭出けれは損を悲(かなし)み
飢桑若の種を七百枚程しかも無理産にうませ
て多くの人をたをしける其怨念の報にや彼
福者親子三人盲人にな成て終にはほろひけり其
人の在所假名なと書記すへけれ共痛ましさに
略す扨又前々養来たる術と此書を合して
蚕の情をためし能く得心する時は教の外に
さま〳〵術有へき事なり且得心なきとなきとても
此書を見る時は養蚕の事におゐてすこしき
補にならさる事あらしたとひ養育の理を
【左帖】
あら〳〵覚るといへ共陽気変化に心付すして
失を出し或は不慮の難を更蚕仕そんする事
世に多し夫我朝は神国なれは常に信心堅
固にして神を敬内には仏道を含み男女和合
にて蚕に心尽時は横合 障曷(しやうげ)をのかれ望所
悉く成就すへし扨又五月入梅より六月土用
迠湿気強くして万のものかひる也此間繭かひさ
るやうにほすへし又夏至には一陰生する故に其節
に至て寒き事有種を出す人は蚕をいそかせ
夏至よりまえに蛭出るやうにすへし若其
節にあたりなは昼夜家内を暖にすへし