翻刻
【右丁】
糸(いと)を引(ひ)き臭気(しうき)を生す此を羹(あつもの)となし食(くろ)ふ是(これ)豉(し)の類(るい)にあらす
薬用(やくやう)には舶来(はくらい)の物 稀(まれ)にあり又 大和国(やまとのくに)《振り仮名:黄■山|わうはくさん》【注①】達磨寺(たるまし)にて製
するものは幅(はゝ)七八分長さ一寸余 薄(うす)く淡黒色(うすくろいろ)にして乾(かは)きたるもの
なり木(き)の葉の形(かたち)を印(しる)す又三列 鳳来寺(ほうらいし)及ひ其辺(そのへん)の寺(てら)にて製
するものは豆粒(まめつふ)なり炒(いり)て食(くろ)ふへし是等の類 皆(みな)支那(しな)の法(ほう)を伝(つた)え
製する物なれは薬用(やくやう)に代(かへ)て佳(か)なり又 諸国(しよこく)の寺院(しいん)にて製する物
及ひ金山寺味噌(きんさんしみそ)の類 皆(みな)鹹豉(けんし)に略(ほゝ)似たり金山寺納豆(きんさんしなつとう)の法 居(きよ)
家必用(かひつやう)十二巻に出つ医家(いか)宜(よろし)く択(ゑら)ひ又 自(みつか)ら製(せい)すへし
豆黄(とうわう) くろまめのかうし
黒大豆(こくたいつ)《割書:くろ|まめ》を以て熟(しゆく)して花を生せしめ日に乾(かはか)し搗(つき)て末(まつ)とす
【左丁】
其法 斉民要術(せいみんやうしゆつ)に詳(つまひらか)なり
豆腐(とうふ)《割書:通|名》 をかべ 白豆腐(はくとうふ)《割書:附|方》
集解(しうかい)に説所の製法(せいほう)は黒豆(こくつ)《割書:くろ|まめ》黄豆《割書:しろ|まめ》及 白豆(はくつ)《割書:しろ|まめ》【注②】泥豆(ていつ)《割書:不|詳》豌(はん)
豆(つ)《割書:ゑんと|うまめ》緑豆(りよくつ)《割書:にんと|うまめ》之 類(るい)を水に浸(ひた)し磑(すりうす)にて砕(すり)て滓(かす)を去りて煎(せん)し
塩鹵汁(ゑんろしう)《割書:しほの|にかり》或(あるいは)山礬葉(さんはんやう)《割書:そめし|はのは》酸漿醋(さんしやうさく)《割書:すせ|うゆ》又 石膏末(せきかうまつ)の類を以て
堅(かた)むると《割書:云| 云》本邦(ほんほう)の製は黄大豆(わうたいつ)《割書:しろ|まめ》一品(いつひん)なり黄大豆《割書:しろ|まめ》を水
に浸(ひた)し磑(すりうす)にて砕(すり)て釜(かま)に入れ煎熟(にしゆく)する時(とき)泡(あわ)の立たるを麻枯(まこ)
餅(へい)《割書:あふらの|しほりかす》にて泡をけす熟(しゆく)して滓(かす)を去り塩胆水(ゑんたんすい)《割書:しほの|にかり》を入れ袋(ふくろ)に入れ
櫃中(はこのなか)に置(おき)堅(かた)むる也 諸国(しよこく)名物(めいふつ)挙(あけ)て数(かそ)ふへからす又 豆腐(とうふ)を切(きり)
水を去 麻油(あふらにて)熟(に)たるを油(あふら)あけと云此物 製法(せいほう)によりて其名数〻
【注① ■は艹+辟+米。「檗(蘗)」ヵ。国立公文書館デジタルアーカイブでは「蘗」(『本草図譜巻之43・44』コマ35 https://www.digital.archives.go.jp/img/4676183)】
【注② 「しろまめ」は「しろあづ(つ)き」ヵ。コマ19二行目に記載有。国立公文書館デジタルアーカイブ(注①と同)では「しろあつき」。】
【十八行八字目~「酸漿醋」は国立公文書館デジタルアーカイブ(注①と同)では「酸醤醋」】