翻刻
【右丁】
大和本草に云 中華(ちうくは)の酒 多(おふ)くは糯米(たへい)にて作る日本は不然(しからす)
異国(いこく)の粳米(かうへい)は味 淡(あは)くして酒につくれは味(あし▢[わヵはヵ]ひ)うすき故(ゆへ)に粳(うるち)にて不(かも)
醸(せす)糯(た)は味 甘(あま)く厚(あつ)けれは酒につくる日本の粳米(かうへい)は中夏(ちうくは)の米よ
り味(あしはひ)よし故 酒(さけ)を醸(かも)す糯米(たへい)を不用(もちいす)して可(か)なりと云り本朝食
鑑《振り仮名:造_レ酒者|さけをつくるもの》先(まつ)《振り仮名:宜_レ択_レ水|みつのゑら▢[むヵひヵ]へし》《振り仮名:以_二流泉井泉最好者_一|りうせんせいせんもつともよきものをもつて》《振り仮名:為_レ 上|しやうとなす》といへり
酒の類(るい)多しといへとも薬用(やくやう)に入(いる)には無灰酒(むくわいしゆ)を用ゆへし寒中(かんちう)に造り
たる酒は灰(はい)を入すして清酒(せいしゆ)となる万願寺(まんかんし)剣菱(けんひし)七(なゝ)ッ梅(むめ)の類 無灰(むくわい)
酒(しゆ)なり其外の時節(しせつ)に造(つく)る酒は灰(はい)をいれされは清酒(せいしゆ)と成かたし釈名(しやくめう)
に酒之清者(さけのきよきものを)《振り仮名:曰_レ醸|しやうといゝ》濁者(にこるものを)曰盎(あふといゝ)厚(あつきを)曰醇(しゆんといゝ)薄(うすきを)曰醨(りといゝ)重醸(ちうしやうを)曰_レ酎(ちうといゝ)
一宿(いつしゆくを)《振り仮名:曰_レ醴|れいといゝ》美(ひを)曰醑(しようといゝ)末搾(しほらさるを)《振り仮名:曰_レ醅|はいといゝ》紅(こうを)《振り仮名:曰_レ醍|ていといゝ》緑(りよくを)《振り仮名:曰■|らいといゝ》【注①】白(しろきを)《振り仮名:曰_レ醝|さといふ》と【注②】
【左頁】
醇(しゆん)は本朝食鑑に日本記 私記(しき)かたさけと云りと同書に醇者(しゆんは)
酒(さけ)の上品(しやうひん)今(いま)俗(そくに)《振り仮名:称_二古酒諸白之類_一歟|こしゆもろはくのるいをせうすか》と云り醨(り) ̄は同書に酒味之(さけのあしの)
軽薄者(けいはくなるもの)なり今俗 所謂(い▢[わヵはヵ]ゆる)からくち木酒(きさけ)倶(ともに)新酒(しんしゆ)《振り仮名:未経_二調和_一|いまたてうくわをへさ■【注③】》の称(せう)
也といへり酎(ちう)は同書 三重醸酒也(さんちうのしやうしゆなり)漢語抄(かんこせうに)つくりかへせ
るさけ又 新酒中(しんしゆちうの)再三(さいさん)加(くわへ)醸(かもするに)《振り仮名:以_二麹糯_一|きくたをもつて》《振り仮名:作_二美酒_一者|ひしゆとなすもの》此また今
俗《振り仮名:称_二新諸白之類_一|しんもろはくのるいとせうす》也といへり醴(れい)は同書に一日一宿之酒(いちにちいちつしゆくのさけ)也
和名(わめう)こさけ又 今(いま)俗云(そくにいふ)甘酒(あまさけ)也 従古(いにしへより)《振り仮名:称_二 一夜酒_一|ひとよさけとせう》也といへり
醅(はい)は同書に醇(しゆく[ん])《振り仮名:未_レ釃|いまたこさゝる》也 漢語抄(かんこせう)云かすこめ俗云 糟(さう)交(ましる)也
又今俗《振り仮名:称_二毛呂美_一也|もろみとせうすなり》といへり集解(しつかい)に種々(しゆ〳〵)酒名(さけのな)これあれとも略(りやく)す
米酒(へいしゆ)
【注① ■は酉+雷・「醽」ヵ。国立公文書館デジタルアーカイブでは「醹」(『本草図譜巻之43・44』コマ48 https://www.digital.archives.go.jp/img/4676183)。】
【注② 「醝」の左下に書かれているものは汚れヵ】
【注③ ■は「る」ヵ。国立公文書館デジタルアーカイブ(注①と同)では「る」。】
【六行六字目~「宜択水」のルビ「みつのゑら▢[むヵひヵ]へし」は国立公文書館デジタルアーカイブ(注①と同)では「みつをゑらふへし」】
【七行下から二字目「造」の右上に点有。汚ヵ。】
【十~十一行目の「曰」の後のレ点の有無は不統一。国立公文書館デジタルアーカイブ(注①と同)のレ点の有無と一部一致せず。】