翻刻
【右丁】
汀の千鳥なくなを又ともゝ悲し
くていとゝ明行夜もなくくれ
行日影もをそかりけれは露の
命草のはにやとすへきやうなけ
れともなのりそ【海藻「ほんだわら」の古名】つみて命をつき【継ぎ】
うき日数をそをくらるゝいたは
しこともなか〳〵に【なまじっか】申はかりもなか
りけりさる間別符兄弟はつ
くしのはかたへ舟をよせよろこひ
の帰朝と風聞す豊後のこう
に御座有みたい所はめつらしき
きよく共をかまへさせ給ひ御出
おそしとまたさせ給ふところに
【左丁】
さはなくして別符兄弟うち
つれて先御前【「前」の右肩に小さく「所」と傍記】さまさして参る
みたい所は御らんしてあれはいつ
もの御さきへのあんない申にこそ
参りつらんと人して聞召へきこと
をおそく思召自身みすまちかく
御出有てめつらしの兄弟や何
とて君はおそくわたらせ給ふ
そ兄弟しはし仰せ事をは申
さすかさねていかにとたつねさせ
給へは其時涙をなかすまねを
して申さんとすれは涙落る
申さすはしろしめさる【理解なさる】ましいた